ビューティフルスマイル社長/文 美月さん/1970年奈良市生まれ。同志社大学経済学部卒業後、日本生命に就職。ネット通販会社「リトルムーンインターナショナル」創業(現副社長)を経て、「ビューティフルスマイル」を起業
ビューティフルスマイル社長/文 美月さん/1970年奈良市生まれ。同志社大学経済学部卒業後、日本生命に就職。ネット通販会社「リトルムーンインターナショナル」創業(現副社長)を経て、「ビューティフルスマイル」を起業

■サイトに「ロス」の説明

 チョコレートの原材料のロスに着眼したのが、通販サイト「ロスゼロ」だ。余った高級チョコの製菓材料を買い取り、独自ブランドの板チョコを製造。今年1月から販売している。

 ロスゼロを運営する「ビューティフルスマイル」の文美月社長(50)は「コロナ禍のつらい状況だからこそ、笑顔でポジティブに食品を消費してもらえる橋渡し役を務めたい」と話す。

 文さんは大学を卒業後、生命保険会社で融資に携わった。留学や結婚、出産を経て、2001年にヘアアクセサリーのネット通販会社「リトルムーン」を創業。子育てをしながら自分の裁量で働きたい、と社長になる道を選んだ。

 当時は、電子商取引の黎明期。文さんはノウハウを一から学び、ヘアアクセサリーの品揃え国内最大級の通販サイトにまで育て上げた。だが、絶好調だった08年、顧客対応をめぐるトラブルに巻き込まれる。月商は7千万円から400万円まで激減。精神的に落ち込み、家に閉じこもりがちになった。売り上げにこだわるばかりではいけないと思った。

1月から「ロスゼロ」で販売を始めた独自ブランドチョコ「Re:You」
1月から「ロスゼロ」で販売を始めた独自ブランドチョコ「Re:You」

 そんなとき企業の社会貢献に興味を持った。社会の価値観が変わり始めているのを実感し、自分にしかできない社会貢献をしたい、と考えると活力が戻った。文さんは使われなくなったヘアアクセサリーを回収し、発展途上国に送る活動に精力を注ぐ。その後、規格外のチョコの販売を手掛けたのをきっかけに、もっと大きな「もったいない」ことの課題解決に挑もうと、18年にロスゼロを立ち上げ、余剰食品や規格外品のネット販売を始めた。

 サイトには、ロスになった理由や生産者の思いを一品ずつ丁寧に説明。値引き率を売りにせず、メーカーのブランドを毀損しないよう心を砕く。

「安いものをゲットできてよかったというよりも、いいものを買った、ちょっと価値あることをした、と楽しく感じてもらえるよう、ロスゼロの世界観を映したサイトの作りそのものが、消費者の意識を少しずつ変えていく営業ツールになっています」(文さん)

 昨年10月には大丸心斎橋店(大阪市)とコラボイベントを開催。コロナ禍で販路を失った食品などを販売し、約1万3千点のロス削減を達成した。

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少しの傷で廃棄予定のフルーツを…