40歳でラーメン屋に転向 ハイヤーからママチャリ生活になっても貫いた「ちばき屋」店主の情熱
連載「ラーメン名店クロニクル」

つじ田の「濃厚つけ麺」は一杯880円。すだちを搾ったりなど、新たなつけ麺の食べ方を提唱し続けた(筆者撮影)
【写真】半熟煮卵が美しすぎる! 「ちばき屋」の支那そば(全7枚)
■変えないように見えて変えるのがつじ田流
濃厚豚骨魚介つけ麺のパイオニアとも言われている「つじ田」は2003年に麹町でオープンして以来、飛ぶ鳥を落とす勢いで世界にまで進出した。当時はまだつけ麺が広く知られておらず、濃厚なつけ麺にすだちや黒七味を合わせて食べるスタイルは珍しく、男性だけでなく女性のファンも獲得した。高級割烹のような店のしつらえも特徴的で、ラーメン店の新たなあり方を提案したお店でもある。
筆者も長年ラーメン店を取材しているが、「つじ田」にはスランプの時期がないように見える。店舗を着実に増やし、路面店やショッピングセンター内といった立地を問わずどのお店も一定の人気を保っている。シンプルなメニュー構成は創業当初からほぼ変わらず、まさに“安定”という言葉が似合うお店だ。だが、店主の辻田雄大さんは言う。
「変えていないように見えて、実は少しずつ変えています。ラーメン人気の高まりとともに、味の平均点はどんどん上がっている。それに負けないように食らいついていかないといけません。同じものを作っているだけでは、なかなか美味しいと言ってもらえません」

「つじ田」店主の辻田雄大さん。「実は猫舌」だという(筆者撮影)
まったく新しい味を作ることはせず、今の味をさらに高めるためのスープの見直しや細かな調整を怠らない。ラーメンの形態は多様化しているが、きちんと作ったものは真新しくはなくても受け入れられると考えているからだ。だから、「つじ田」はつけ麺とラーメンの2枚看板を徹底的に磨き上げる。
「すだちや黒七味も、新しいことをやろうとしたわけではないんです。どうすればお客さんに喜んでもらえるか、より美味しく食べてもらえるかを考えて、試行錯誤の末たどり着いた答えです。あくまで僕は王道でいきたい」(辻田さん)
「つじ田」が一番大事にしているのは、「お店の空気」だ。お客さんが評価するのは、ラーメンの味だけではない。接客はもちろん、店の作りや雰囲気などを総合してそのお店のファンになる。辻田さんは、お客さんが店内で快適に過ごせる空間づくりを何よりも大事にしている。「いい店かそうでないかは、店の構えや店内に入ったときの雰囲気だけでわかる」と辻田さんは言う。

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