
一之輔 俺なんて、別につまらない生活してるのに。
キッチン でも、1年ぐらいは一之輔さんとの距離が縮まった感じはしなかったですよ。むしろ嫌われてるかなと思ってた。
一之輔 嫌ってはなかったけどね。キッチンは人見知りしないから、そういうところは少しうらやましいし。俺は奥ゆかしいし、どちらかというと一歩引いちゃう。キッチンはフットワークが軽いから、ああしろ、こうしろと言うとすぐやってくれるから、それは楽なんだよな。
キッチン 一之輔さんがヨーロッパで落語をやるって聞いたら、すぐに行くって返事して、一緒に行きましたしね。
一之輔 俺は海外に行ったら、物を買うのもちょっとめんどくせえなと思っちゃうんだけど。でもそういうときに「水、買ってきてくれ、キッチン」て言うと、「はーい」と買いに行ってくれる。
キッチン お金ないから、ホテルは一之輔さんと同じ部屋に泊まらせてもらって。
一之輔 すげえ迷惑だったよ。嫌だったよ、俺は。
キッチン アハハハハ! でも僕、自費出版で一之輔さんの写真集を出したじゃないですか。それ、完売したんですよ。で、自費出版だともったいないと思って。今回の『師いわく』も自分で小学館に企画持っていったら、出版できることになって。自費出版でもいいんですけど、出版できたら全国に広がるじゃないですか。それは一之輔さんにとってもいいことだなと思ったからこそなんですよ!
一之輔 恩着せがましいなあ。
キッチン さっきも言ったけど、一之輔さんって、ポロッと言う言葉が面白いんですよね。それを引き出すのはどうしたらいいかと考えて企画立てて。一之輔さんも不惑になったし、いい言葉を引き出すには、人生相談だなと。一般の人からメールでお悩みを募集して、ウェブで連載が始まりました。
一之輔 弟子からも悩み相談なんてされたことないのに。自分だったらどうするかなと思いつつ、居酒屋で飲みながら3、4時間ぐらいダラダラとしゃべるんだけど、だんだん何言ってるか分からなくなるんだよな。
キッチン 印象に残ってる悩み相談とかありますか?
一之輔 「友だちと何を話せばいいかわかりません」ていうのは覚えてますね。無理してる人が多いんですよ。話したくなければ、話さなくていいんだから。