キッチンミノルさん(写真部・小黒冴夏)
キッチンミノルさん(写真部・小黒冴夏)

キッチン 「私は話がつまらない(ようです)」というのもありましたね。

一之輔 あと、「スクール水着はワンピースタイプがいいでしょうか」なんて、俺はどう答えたらいいか分からねえよ。好みじゃないし。まあ、そういうのは、「答えたらおかしなことになる」と、なぜ俺が答えないかという理由を答えましたけどね。

キッチン 時々スイッチが入って止まらなくなるんですよ。ほら、書籍にはまだ入ってないけど「タックル」の話とか。

一之輔 ああ、屈強な男を見るとタックルしたくなるっていう女性の悩みね。あれは軽はずみな質問なんですよ。タックルというのは、肩をぶつけるようにして、相手の腿に入るんですよ。そんなことも知らないで、この人は抱きつく程度のことを言ってるんだろ? タックルと抱きつくというのは大違いなんですよ。だいたい、この人だって本当にタックルを……。

キッチン ほら、また。全然僕聞いてないのに。高校のときラグビーやってたから止まらなくなるんだろうけど、そもそも1年間しかやってないでしょ。

一之輔 いいじゃねえか、別に。

キッチン でもこういうのが面白いんですよ。『師いわく』は、一之輔さんの落語の面白さのエッセンスが詰まっている気がしていて。生活の中から出てくる一之輔さんの考え方が、「あ、こうやって落語になるんだな」と思えるんですよね。

一之輔 俺は結構「ご隠居さん」と「八っつぁん」が出てくる落語が好きで、その寄席の雰囲気でアドリブをやったりするんですけど、この人生相談はそれに近いかな。屁理屈をこねたりね。いや屁どころか、糞だな。屁以下の実かもな。

キッチン いや、実まで出てるって貴重ですよ!

一之輔 うん、そうだね。汚いけどね。

春風亭一之輔(しゅんぷうていいちのすけ)
1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。12年、21人抜きで真打昇進。現在は年間900席以上の高座をしつつ、ラジオ、雑誌などでも活躍。書籍に『春風亭一之輔の、いちのいちのいち』(キッチンミノルとの共著・小学館)や『いちのすけのまくら』(朝日新聞出版)など。

◯キッチンミノル
1979年、米国テキサス州生まれ。法政大学卒業後、不動産販売会社を経て、写真家に。主に雑誌や書籍、広告の撮影で活躍。人物と料理の写真に定評がある。書籍に『多摩川な人々』(ミルブックス)、『フィルムカメラの教科書』(雷鳥社)、『メオトパンドラ』(ニューホイル)、『沖縄 のこしたい店 忘れられない味』(誠文堂新光社)など。

(構成/編集部・大川恵実)