大学を1年留学して17年に制御機器大手「キーエンス」に新卒採用された。同時期に、社会人お笑い団体「わらリーマン」を発足。都内でお笑いライブを主催し、自らも演者として舞台に立ち続けた。
「僕自身、社会人になってもお笑いへの情熱は消えず、趣味としてお笑いを続けられる場がほしいと思ったんです」(同)
全国規模のお笑いコンテスト「社会人漫才王」の企画立ち上げのため脱サラしたのは19年。だが、今もビジネスとして成立しているとは言い難いという。
「採算はトントン。完全に自己満足の世界です。続けているのは、好きだから、に尽きます」
そう話す奥山さんに悲壮感はない。手応えがあるからだ。昨年12月に開催した4回目の「社会人漫才王」には過去最多の191組がエントリー。テレビディレクター、メーカーの営業、運送業の総務、教諭、塾講師、エンジニア、コピーライター、研究職……参加者の「本業」のバリエーションは年々広がっている。彼らのモチベーションは何なのか。
「舞台上で観客を笑わせた時に感じる幸福感って何物にも代えがたい。その快感の虜になっている人たちだと思います」
草野球や社会人川柳が当たり前にあるように、社会人お笑いを日本の当たり前にしたい。それが奥山さんの目標だ。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年4月10日号より抜粋