結婚したら、子どもを産んで育てたい。でも仕事のキャリアを考えると「もうちょっと待ってから」。気づけば機を逸してしまう(撮影/品田裕美)
結婚したら、子どもを産んで育てたい。でも仕事のキャリアを考えると「もうちょっと待ってから」。気づけば機を逸してしまう(撮影/品田裕美)

 なぜ結婚するカップルが減っているのか。その心理や背景を追った。AERA 2023年1月23日号の記事を紹介する。

【図】初婚件数は50年前と比べてどのくらい減っている?

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「好きな仕事を続けるか、結婚・出産を取るか……」

 スポーツジムでインストラクターとして働く女性(29)は揺れている。学生時代からスポーツに打ち込み、短大卒業後一般企業に就職したが、スポーツに関わる仕事に就きたいと退職。トレーナー養成の専門学校を経てジムに就職した。今の仕事はまさに天職だと感じている。

 ただ、30歳を目前に焦っている。付き合って5年の恋人がいてお互いに結婚を考えているが、今の状況で果たして結婚できるのか。勤めているジムには妊娠、出産を経て復帰した女性インストラクターはおらず、しかも仕事は朝早く夜遅く、休みが少ない。子育てしながら続けられるとは思えない。収入の面もネック。東京23区内で暮らすにはカツカツの額で、埼玉県のアパートから1時間かけて職場に通っているくらいなのだ。恋人も同業者で仕事のハードさ、収入面での不安具合は同様。どうするか、結論はまだ出ていない。

AERA 2023年1月23日号より
AERA 2023年1月23日号より

■氷河期世代を見てきた

 婚姻件数が減り続けている。内閣府の2022年度版「男女共同参画白書」によると、21年は51.4万と、1970年の102.9万から半減。国立社会保障・人口問題研究所の「出生動向基本調査」(21年調査)によると、18~34歳の未婚者で「一生結婚するつもりはない」と答えたのは男性17.3%、女性14.6%。1982年の男性2.3%、女性4.1%と比べると大幅に数字を伸ばしている。なぜなのか。

 調査対象の年代は、ひと世代上の就職氷河期世代が仕事を得られず、結婚したとしても経済的に苦労するのを目の当たりにしている。「お金がないと、とてもじゃないけど結婚できないし、してもかえって大変になるだけ、と感じているのでは」。こう指摘するのは、兵庫教育大学大学院准教授で家族社会学者の永田夏来さんだ。

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小長光哲郎

小長光哲郎

ライター/AERA編集部 1966年、福岡県北九州市生まれ。月刊誌などの編集者を経て、2019年よりAERA編集部

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