丸山海苔店 販売部部長 青木義理(あおき・ともたか)/1985年生まれ、東京都出身。2007年入社。通販業務を担当後、築地場内市場、築地本店の店長を務める。海苔のソムリエとしてプロの料理人から一般客までアドバイスを行う(撮影/写真映像部・加藤夏子)
丸山海苔店 販売部部長 青木義理(あおき・ともたか)/1985年生まれ、東京都出身。2007年入社。通販業務を担当後、築地場内市場、築地本店の店長を務める。海苔のソムリエとしてプロの料理人から一般客までアドバイスを行う(撮影/写真映像部・加藤夏子)

 全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA 2022年12月26日号には丸山海苔店・販売部部長の青木義理さんが登場した。

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 ミシュランガイドで星を獲得した寿司店の約6割が、丸山海苔店の海苔を使っている。その多くの店から目利き役に指名される、海苔のソムリエだ。

 全国の主要漁場で採れる一番摘みを買い付け、自社工場で焼き上げている。

 商品は200種類以上に及ぶが、見て触って味わうと、産地から等級、品質まで分かるという。

 その上で「生の状態で見極められるレベルになりたい」と、さらなる高みを目指して日々、勉強と努力を重ねている。

 毎週、工場での焼き作業に立ち会い、テーブル一面に並べた約20種類の海苔を、厳しく見極めて選別する。

 良い海苔とはつや、香り、甘み、歯切れのある食感のものだ。焼き方が悪いものは、食べると口の中にごわつきが残り、色味にもばらつきがでるという。

 いかに質の良い商品のラインアップを増やすか、仕入れ担当を含めて話し合い、味の管理をする。

 全ては、顧客が求める海苔を、自信を持って提供するためだ。

「海苔は単なる海藻ではなく、奥が深い食べ物なんです」

 手巻き寿司は、パリッとした食感のもの。太巻きには、巻いても破れないよう厚みがあって、時間が経つとしっとりし、磯の深みが増すもの。握りには、口の中でとろける繊細な風味のもの……。求められるものは千差万別だ。

 脇役に思われがちな海苔だが、その味が寿司自体のステージを上げる。

 顧客の店を訪ねることもある。そこで求める品質、こだわりをじっくり聞いた上で、マッチした海苔を提供するように心がけている。

 築地本店では店長として、一般客とも接している。今、食べるのにふさわしい海苔を提供するため、体調を尋ねることもある。親子3世代にわたってアドバイスを求める人もいるという。

 海苔一筋15年。

「お客様を軸に考える」ことを徹底してきた。商品への愛着と自信、プロとしての自覚はある。

 そんな海苔のソムリエのおすすめは、初めて食べた時に、そのおいしさに衝撃を受けた有明海産の「大はしり」だ。海苔に一番合う飲みものは、緑茶とのことだ。(ライター・米澤伸子)

AERA 2022年12月26日号