松下洸平さん直筆の連載タイトルロゴ
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川谷 僕が手がけているバンドのひとつ「indigo la End」では、愛や恋を歌っていますが、ずっとやっているとだんだん言いたいことがなくなってくる。だから、新しい価値観を映画やドラマなどで摂取するようにしています。「最愛」にはいろんな人間関係と愛の形があって、これは曲にしたい、とかなり前のめりに観ていました。

松下 ありがとうございます。

川谷 宇多田ヒカルさんの主題歌もめちゃくちゃよかったです。こんなシンプルな言葉でこんなすごい曲を書かれたら、もう何も書けないな、と(笑)。ドラマも音楽も全部よかったです。

松下 いろんなものが届いた感じがして、本当にうれしいです。僕が川谷さんの世界観にがっつりハマったきっかけは、バンドの「ジェニーハイ」です。家ではもちろん、移動中もずっと聴いてます。ドラマの撮影中は朝5時半に起きて、移動して、そのまま夜11時や、遅いときは2時、3時までかかることがあります。現場で消費する心のカロリーがとても多くて、けっこうカラカラになる。でも、帰り道に車の窓をあけて夜の風にふわーっとあたりながら川谷さんの音楽を聴いていると、潤ってくるんです。鳴っている音や声、バンドのサウンドが心地よくて、沁みてくるものを感じながら一日が終わっていくのが、最近のルーティンになっています。

川谷 そんなふうに言っていただいて、めちゃくちゃうれしいです、ありがとうございます。

松下 「最愛」の中には、いろいろな愛の形があって、人を一途に思うことの難しさを作品を通して改めて痛感しました。そんな恋愛もののドラマをやっている時は、川谷さんの言葉がとても響きます。きれいごとばかりじゃないところが、いちファンとして好きですね。人間の欲の塊みたいなものも書いてくださいますし。その世界観は、どういう創作過程になっているのか気になっていました。ドラマや映画からアイデアを得られることも多いんですね。

川谷 そうですね。「ジェニーハイ」に関しては、面白い言葉が浮かんだら、それをそのまま歌にしています。ボーカルの声を想像しながら、みんなが知っている言葉だけど、やったことがない組み合わせを常に考えてますね。ちゃんみなとコラボした「華奢なリップ」という曲も、その言葉が浮かんだと同時に、サビができました。

松下 なるほど。日々、言葉を探しているんですね。

川谷 そうですね。メモもよくとります。洋画のセリフを画面を止めてスクショして保存することもあります。

松下 ちなみに「最愛」を観てひらめいたものは曲になりましたか?

川谷 まだ曲にはできてないんです。でも、オケはできてますよ。

松下 うわっ、本当ですか、それはすごいな……。

川谷 いま歌詞を試行錯誤しています。

松下 完成したらぜひ、教えてください。

○かわたに・えのん

1988年生まれ、長崎県出身。手がけるバンドは「indigo la End」「ゲスの極み乙女」「ジェニーハイ」「ichikoro」「礼賛」。アーティストへの楽曲提供やプロデュースも多数。12月18日まで「ゲスの極み乙女」の全国ツアー中

○まつした・こうへい

1987年生まれ、東京都出身。11月23日に1stアルバム「POINT TO POINT」をリリース。同30日から、全国9カ所11公演のライブツアー開催。TBS系ドラマ「アトムの童」出演中。写真集『体温』発売中

(構成/編集部・古田真梨子)

※11月28日発売の「AERA 12月5日増大号」では、対談の続きを掲載しています。

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古田真梨子

古田真梨子

AERA記者。朝日新聞社入社後、福島→横浜→東京社会部→週刊朝日編集部を経て現職。 途中、休職して南インド・ベンガル―ルに渡り、家族とともに3年半を過ごしました。 京都出身。中高保健体育教員免許。2児の子育て中。

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