清田友理香(きよた・ゆりか)/1988年生まれ。2011年、ソニー(現ソニーグループ)入社。専門はHCD(人間中心設計)。aiboなどを支えるクラウドサービスの開発などに取り組む(photo 写真映像部・東川哲也)
清田友理香(きよた・ゆりか)/1988年生まれ。2011年、ソニー(現ソニーグループ)入社。専門はHCD(人間中心設計)。aiboなどを支えるクラウドサービスの開発などに取り組む(photo 写真映像部・東川哲也)

 もっとも、清田は前年に結婚していた。「問題はなかったんですか」と思わず尋ねると、こう答えた。

「夫もソニーで研究開発をしているんです。『いってきてもいい?』『いっておいで』みたいな感じで、送り出してもらいました」

 このあたりが、ひと昔前とは肌感覚の違うところだ。単身米国へ渡って勉強したいという妻と、快く送り出す夫という関係は、昭和の時代なら考えにくいだろう。

 しかし、清田夫妻にとっては当然のことだった。彼女は単身、米国へ向かった。

 サンディエゴで3カ月間、現地のチームと一緒に仕事をしながら学んだ。通常、日本で開発した製品は、米国向けであっても現地で使ってもらって検証することは難しい。そこで、その部署では、さまざまな国から米国市場向けの製品を受け入れ、ユーザーに試してもらったり、検証したりする仕事を行っていた。

 清田も、一緒に市場調査やユーザー調査、検証を行った。

「日本では、専門の人が少しだけ知っているような知識について、アメリカではどんな方法で調査していて、どういうふうに学べばいいのか。学んだことを持ち帰ってフィードバックしました」

 清田は、日本のソニーに「人間中心設計」の考え方を輸入した。

 現在ではインターフェィスの改善などに限らず、製品の仕様や企画にさかのぼってUX をデザインする段階まで仕事の領域は広がっている。

 (文中敬称略)(ジャーナリスト・片山修)

AERA 2022年11月28日号より抜粋