アンコールでは、14年ソチ五輪で初めて金メダルを獲得した時のSP「パリの散歩道」を演じた。原点をたどるショーは、歩んだ五輪ロードの「序章」で締めくくられる形だ。

「プロだからこその目標みたいなものは、具体的に見えていないんですよ。こういうことはある意味、僕の人生史上初めて。今までは常に『五輪で金メダルを取る』という目標がある上で生活してきたので。ここから新たな『羽生結弦』という選手につながって、それが積み重なっていくことで新たな自分の基盤ができる。今できることを目いっぱいやって、フィギュアスケートの限界を超えていけるようにしたいなと思います」

 五輪メダルがまだまだ先のことのように感じていた16歳の頃のインタビューを思い出す。

「頭の中の計画では23歳で引退。その後はプロになって、地震とかに募金をして……」

 あの頃の「計画」から4年遅れでスタートさせたプロの道。「羽生結弦」という物語の「第2幕」がここから始まる。(朝日新聞スポーツ部・坂上武司)

AERA 2022年11月21日号