※写真はイメージです(GettyImages)
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 BL、音楽、ドラマなどエンターテインメントで「タイ沼」に落ちる人もいれば、渡タイをきっかけに人生が変わるほど深みにハマる人も。AERA 2022年10月31日号より紹介する。

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 東京都在住のMegumiさん(53)は、タイへは「帰る」という感覚だと話す。

「タイのマイペンライの精神はホッとします」

 マイペンライは、「大丈夫、なんとかなる」という意味だ。

■急に親近感が湧いた

 Megumiさんは、大学4年生の春休みにバンコクとチェンマイへ一人旅をした。チェンマイへはエアコン付きの高級夜行バスに乗るつもりが、間違えて普通のバスへ。外国人はMegumiさんだけで、ガタガタ道では後ろの席のカップルが首を支えてくれた。そのカップルから誘われ、彼女のチェンマイの自宅へ遊びに行くと、「あなたは私の高校時代の友人に似ているの」と一枚の写真を見せられた。「そこには私が! 急に親近感が湧いてきました」(Megumiさん)

 帰国後、タイ語を習得。長期休みのたびにタイの、特に地方都市へ出掛け、東京ではタイカラオケを楽しみ、彼(後に夫)から結婚を申し込まれた際は「タイ料理、好き?」と確認。まさに「タイなしにはいられない」。タイ料理店巡りは当然で、自らも作り家族に振る舞う。20年7月から今年3月までの名古屋での単身赴任中は、タイ野菜を取り寄せ、昼に夜にタイ料理を自分一人のために作った。

 長野県上伊那郡箕輪町に1日1組限定のタイ料理店がある。Megumiさんもファンだというその店の名は「GUUUT」。東京・六本木で創作和食店を経営していた三浦俊幸さんが、故郷に同店を開業したのは18年。20年には六本木の店を閉め、「GUUUT」一本にした。

■きれいでおしゃれ

 創作和食からタイ料理とは大きな転換だ。三浦さんは、東日本大震災を機に安全安心な野菜を作りたいと農業を始めた。育てた野菜で漬物など発酵食品を作っていく中で、熟鮓や魚醤などの発酵食品を掘り下げていくうち、それらのルーツは東アジアにあると知った。

「最初はチェンマイ、さらにチェンマイ北部でミャンマーとの国境付近にあるピアンルアンを訪ねると、故郷である伊那との共通項を感じました。自分の子ども時代の原風景、食生活と同じなんです。食文化の似ている南信州の食材で料理を再構築させ、チェンマイ、もっと言うならピアンルアンの食文化を次世代へ伝えていきたいと考え、GUUUTを始めました」

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