大宮エリーさん(左)と倉本聰さん/photo 本人提供(大宮エリー)
大宮エリーさん(左)と倉本聰さん/photo 本人提供(大宮エリー)

 作家・画家の大宮エリーさんの連載「東大ふたり同窓会」。東大卒を隠して生きてきたという大宮さんが、同窓生と語り合い、東大ってなんぼのもんかと考えます。6人目のゲスト、脚本家・演出家の倉本聰さんが東大と北海道・富良野との縁を語ります。

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大宮:「チック」で言いますと、私、東大在籍中に一つだけ記憶に残ってる授業があって。富良野に自力で来いっていう授業で。

倉本:ほう。

大宮:富良野に行って駅でぼんやりしてたら先生が来て。富良野にある東大の演習林で、きのこの話を聞いたり森の話を聞いたりして、メロンを食べて帰ってきたんですけど。すごく楽しかったんですよね。

倉本:何の授業ですか。

大宮:森の生態系を学ぶっていう授業で、森の中に放り込まれて、みんなで黙々と歩くような授業でした。

倉本:僕、演習林にちょこちょこ行きますけど。

大宮:えー! あ、富良野に住んでらっしゃいますもんね。移住して東大の演習林があると知ったときは宿縁を感じました?

倉本:それはちょっと感じました。ギョッとしました。「どろ亀先生」(故・高橋延清さん)って有名な林長がいてね。東大の教授なんだけど、この先生に、僕、富良野に来てすぐ知り合って、ずいぶん森を教わったんです。ある日ね、「倉さん、俺退役しちゃって仕事がねえから、オタマジャクシの研究を始めた」って言うんですよ。でね、演習林の三つの池にそれぞれ別の種類のオタマジャクシがいるって言うのね。

大宮:ええっ!

倉本:3年間それぞれを研究したら、分かんないことも出てきたから図書館で中学の参考書程度のオタマジャクシの専門書っていうのを読んだって言うの。そしたらなるほどって説もあったし、間違いがあるのにも気づいたって。この話を聞いて、僕はちょっと感動したのね。東大の教授でしょ。それが、本を読んで研究するんじゃなくてね、実地で研究して、あとで本を参照してる。学ぶってこういうことだなと思いましたね。

大宮:東大で教鞭(きょうべん)をとられるとしたら、どういうことを話されます?

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