時に砲弾が落ちる現場で手術室に立つ医療チームは「戦友」と呼べる存在だ。白川さんは、国際色豊かなチームの絆を深める「医療外交」として、ごはんづくりに精を出した。師匠は、スリランカで全員分のチキン丸ごと入りのスープの味を伝授した、「スーパーシェフ」の産婦人科医。正体不明の調味料を「ぶっ込む」豪快さをユーモラスに描写。医療も暮らしも「ありあわせ」で工夫する。

「柔軟さこそ生きる術。不足で生まれる豊かさもある」

 ロシア・ウクライナ情勢は厳しさを増す。世界には、終わらない戦争が数多ある。

「戦争は一部の権力者が始めるものでしょう? 盤上の駒のように人を動かしていたら、その裏に一人ひとりの市民の運命があるなんて、絶対に気づかない。でも、市民はみんな気づいているんですよ。最も愚かなことは何かと」

 白川さんらしい遊び心のあるコーナーが、「世界の“寝床”快適度ランキング」。マングースが訪れる環境を「平均値」と記す。青空の下にベッドが置かれた写真も……。快適度ナンバー1の驚きの寝床は、本書でのお楽しみに譲る。(ノンフィクションライター・古川雅子)

AERA 2022年7月18-25日合併号