首都直下地震を想定し、2018年、行われた防災訓練の様子
首都直下地震を想定し、2018年、行われた防災訓練の様子

 東京は地震が多い。5月25日、首都直下地震の最新被害想定が公表された。犠牲者を抑えるカギは、住宅の耐震化率を上げることと、高齢者など災害弱者をどう守るかだ。AERA 2022年6月20日号から。

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 174回。

 2021年に東京都で震度1以上の揺れを観測した地震の数だ。12月の約2週間で300回もの有感地震を記録したトカラ列島がある鹿児島県や、東日本大震災の影響がなお残る東北の各県よりは少ないが、都道府県別で7番目に多かった。

 東京は地震が多い。関西などから移り住んだ人の多くがそう感じるというが、それはデータでも裏付けられている。東京大学名誉教授の平田直(なおし)さんは言う。

「東京の地下は、複数のプレートが力を及ぼしあう複雑な構造をしています。東京周辺は世界的に地震が多い日本でも、特に地震が起きやすい地域なのです」

 日本列島の「地下」を見てみると、東日本では陸のプレートである北米プレートの下に、海のプレートである太平洋プレートが沈み込む。そして、西日本ではユーラシアプレートの下にフィリピン海プレートが。一方、東京を含む南関東の太平洋沖では、陸のプレートの下に南東からフィリピン海プレートが、さらにその下に東から太平洋プレートが沈み込んでいる。地震はプレートが水平方向に動くことで生じる力によって起きるため、両方の影響を受ける関東は地震が多くなるのだという。

■都市機能がマヒする

 そんな南関東の真下、あるいは近郊を震源とし、首都機能に重大な影響を及ぼす「首都直下地震」も、近い将来の発生が危惧される。地震調査研究推進本部が予測する今後30年での発生確率は、プレートの沈み込みに伴うマグニチュード(M)7クラスの地震が70%程度、1923年の関東大震災を引き起こしたようなM8クラスが0~6%、立川断層帯で起きるM7程度の地震が0.5~2%──。

「南関東では、フィリピン海プレートと陸のプレートの境界で起きるM8クラスが200~300年に1回、プレートの沈み込みに伴うM7クラスが約30年に1回発生しています。M7であっても、人や建物が集まり、政治・経済活動の中心地でもある首都直下で起きれば影響は甚大です」(平田さん)

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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