部隊視察で陸上自衛隊の10式戦車に乗車する岸田文雄首相(代表撮影)
部隊視察で陸上自衛隊の10式戦車に乗車する岸田文雄首相(代表撮影)
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 岸田文雄首相は日米首脳会談で「防衛費の相当な増額」を表明した。自民党が掲げるGDPの2%を防衛費にすれば、今年度より約5兆円の増額に相当する。どのような使い道が想定されるのか。AERA 2022年6月13日号の記事から紹介する。

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 岸田文雄首相は5月23日、バイデン米大統領と会談、日本の防衛力を根本的に強化し、その裏付けとなる防衛費の相当な増額を確保する決意を表明した。米国はトランプ政権下の2020年から同盟国に対し防衛費を国内総生産(GDP)の2%以上にすることを求め、自民党の政務調査会は昨年10月の衆院選の公約として「防衛費をGDPの2%の水準にする」ことを掲げたから、やがてそれは実現されるだろう。

 今年度の防衛費当初予算は5兆4005億円で、昨年度に成立した補正予算7738億円と合わせると6兆1744億円だ。政府は今年度のGDPは564兆6千億円と見積もっており、その2%を防衛費にすれば約11兆3千億円(約890億ドル)となり、今年度よりおよそ5兆1千億円の増額枠を認めることになる。

■2021年は日本9位

 ストックホルム国際平和研究所が4月に発表した「世界の軍事費」によれば、21年の米国の国防予算は8010億ドル、中国(推計)2930億ドル、インド766億ドル、英国684億ドル、ロシア659億ドルで、日本は9位だった。だが日本の防衛費がGDPの2%になれば、日本は一気に米国、中国に次ぐ第3位になる。

各国の軍事費(AERA 2022年6月13日号より)
各国の軍事費(AERA 2022年6月13日号より)

 憲法9条を改定しても、おそらくほぼ既成事実の追認になりそうだが、防衛費を世界第3位にする「抜本的強化」は日本が軍事的列強の一国となる点で、憲法改定以上に実質的な変貌(へんぼう)かと思われる。

 通常、国家の予算は政府の各部門が事業に必要な経費を積み上げて財務当局に要求し、論議、調整して国会の了承を得て決する。

 だが今回の防衛費増額は米国の意向により方針が決まったのだから、突然予算枠が2倍になるのは防衛省にとって棚から大きいボタが落ちてきた形だ。年に5兆円の巨費を何に使うかとまどいもあり、今年中に次の「中期防衛力整備計画」(24年から5年)や「防衛計画の大綱」(約10年)、「国家安全保障戦略」を決めて使途が具体化される。

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