──ためらったら米国の威信は揺らぎ、北朝鮮などから弱腰と思われませんか。

藤原:核には核で反撃しなければ核保有国のクレディビリティー(信頼性)が下がってしまうというジレンマですね。おそらく可能性が高いのは核弾頭を使わない長距離ミサイルでロシアの核施設を破壊することです。でもわかりません。(西側の世論で)核反撃すべきという議論が加速するかもしれないし、反対に核攻撃されることへの恐怖が高まり、停戦合意を求める声が広がる可能性もあるでしょう。

 米国やNATOが介入する場合は、地上戦ではなく、まずミサイルとドローンで相手の力、特に対空防御を破壊していく。その次に空軍が攻撃機や戦闘機で軍事拠点を叩(たたき)き、ロシア内のミサイルや部隊を壊します。

■ロシアは勝てない

藤原:一般市民に対する攻撃ではないですが、巻き込まれて亡くなる方が大量に出てくる。この段階で第3次世界大戦という言葉を使ってもおかしくないだろうと思います。ただ、いまはその段階まではいっていません。

 いろんなシナリオを申し上げましたが、一番大事なのは、どのシナリオでもロシアは勝てないということです。戦争をエスカレートさせ、化学兵器や核兵器を使っても、ロシアが勝利を収める可能性はゼロ、皆無です。だから不合理なんです。

 いま問われているのは、不合理な相手に対してどんな選択をするのか、この一点です。プーチン政権が倒れるまでこの戦争は続く。でもプーチン政権には、いまのところ戦争をやめる意思の表明が全くない。それが現状です。

(構成/ライター・鈴木あかね

AERA 2022年5月30日号より抜粋