ロシアによるウクライナ侵攻から3カ月が過ぎた。戦火は収まる気配がなく、核兵器の使用も現実味を帯びる。国際政治学者の藤原帰一さんに、今後の国際情勢について聞いた。AERA 2022年5月30日号の記事から紹介する。

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──この戦争はウクライナが勝てば勝つほど、ロシアが核や化学兵器を使う可能性が高まる。実にやっかいです。

藤原:そうですね。今はウクライナが勝っているので、西側によるウクライナ支援の実効性が高まっていると考えられ、それがまた支援を強固にしています。とてもいやな話ですが、戦争に勝てると思って電撃戦を展開する国家を抑止する方法はありません。ロシアに対抗するには、戦争する以外の選択肢はない。

 今後、夏から秋にかけて戦争が進む可能性が高い。ウクライナが首都キーウに続き、第2の都市ハルキウの防衛に成功したいま、東部でもロシア軍を押し返す。南部でもロシアに反撃し、ウクライナが優勢になりますが、ロシア軍すべてを押し返すのは難しいでしょう。では西側はどこまでウクライナを支援するか。すでに北大西洋条約機構(NATO)の加盟国は高度な武器を限界に近いくらい提供していますが、最大の問題はロシアが核兵器を使うかどうかです。

■核保有国のジレンマ

──ゼレンスキー大統領の補佐官が「西側はロシアの核使用というハッタリに動じないでくれ」とツイートしていました。

藤原:ウクライナの立場からは当然そう言いますね。ロシアはNATOの結束を弱めるためだけに言っているのかもしれない。ただプーチン政権の場合は使用可能性があると考えるべきです。

 核兵器が実戦で使用されたら、西側は人道に対する罪として戦争の規模を拡大せざるを得ない。NATOの直接介入の可能性も高まります。ポーランド、バルト三国などロシアと国境を接する地域がロシアに全面戦争を展開すべきだと訴え、米英の賛同を得ていくことになる。

 さらにその先がある。核の先制不使用という歯止めは相手が破ればなくなるので、NATOはロシアを核攻撃できる。でも、ためらうと思います。ウクライナにどれほどの破壊がもたらされたとしても、核で応戦すれば欧米の都市に対する核兵器使用の可能性が高まりますから。

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