クリックすればその時の映像が確認でき、「この看板に気を取られて脇見をしているな」など状況が客観的に判断できる(写真:モビリティテクノロジーズ提供)
クリックすればその時の映像が確認でき、「この看板に気を取られて脇見をしているな」など状況が客観的に判断できる(写真:モビリティテクノロジーズ提供)

「昨年6月には、立て続けに4件事故が起きてしまいました。うち2件は同一スタッフによるものでした」(渡部さん)

 アンダンテ業務改善室の佐藤純一さんが説明する。

「ドライブチャートを導入する前は、事故が起きても始末書を書いてもらうぐらいしかできず、反省から改善につなげるフローがありませんでした。運転技術の測定が難しく、客観的なアドバイスができる人もいないためです」

監視が安心感に変わる

 こうした軽微な事故を起こしても、当人は「今回はたまたまだった」と思いがちだ。さらに運転経験が豊富で技術に自負がある場合など、本人も危険運転の癖に気づきにくく、周りも指摘することが難しい。

 それがドライブチャートによって、本人の運転技術が「見える化」された。スタッフ同士で動画を見せ合ったり、アプリ上の地図を見て危険な経路を共有したり、運転に関する情報共有も自然と増えたという。こうした成果もあり、昨年10月以降に起きた事故は、夜間の運転中に車の死角で擦った1件のみに減った。

「(車内カメラがあるため)はじめは監視されているような気がしていましたが、いまでは見守られている安心感に変わりました」と渡部さん。

 費用は機器購入プランとレンタルプランがある。導入条件によって価格は異なるが、レンタル代とサービス利用料込みで、1台あたり月数千円程度だ。

「事故が起きれば車両の修繕費がかさみ、保険料も割高になります。導入の費用はそれらのコストと同等程度で収まればそれでいいと考えています。何より事故が減らせるわけですから」(業務改善室の佐藤さん)

 交通事故に関しては、命に関わる重大な事故が起きてから対処するのでは手遅れだ。事故が起こる前に運転の癖を可視化して改善する。AIドラレコが事故防止の強力な一手になりうる。そして、「自分は運転がうまい」と思っている人ほど、多くの気づきがありそうだ。(編集部・高橋有紀)

AERA 2022年4月11日号より抜粋