[和歌山]すさみ/地元の食材が詰め込まれた「朝食ボックス」は、ホテル宿泊客だけが味わえる(写真:積水ハウス提供)
[和歌山]すさみ/地元の食材が詰め込まれた「朝食ボックス」は、ホテル宿泊客だけが味わえる(写真:積水ハウス提供)

 同グループは県内の他の道の駅にも出店している。

「遠方からの旅行者にとって、道の駅は安心して利用できる施設だと思うんです。地元の魅力をPRする場としても重要だと考えています」(東田さん)

 積水ハウスとマリオット・インターナショナルが連携して18年に事業発表した「道の駅プロジェクト」は、道の駅を拠点にして地方創生に取り組む事業だ。和歌山県すさみ町の「道の駅すさみ」など、道の駅と近接する地にホテル「フェアフィールド・バイ・マリオット」を開業し、宿泊客の消費を促す仕掛けをしていく。現在は5府県14ホテルを展開中で、25年には26道府県で約3千室規模への拡大を目指しているという。

 その最大の特徴は宿泊特化型であること。ホテル内にレストランやバスタブが無いため、必然的に道の駅や地域の飲食店、温泉施設を利用することになる。

 積水ハウス開発事業部「道の駅PJ運営統括室」室長の渡部賢さんはその狙いをこう語る。

「今までの道の駅は、人流も売り上げも昼の時間帯に集中していましたが、ホテルがあることによって夕方以降にも売り上げがたつ流れができた。これは大きな進化だと思います」

道の駅内にある居酒屋「すさみ夜市」(写真:積水ハウス提供)
道の駅内にある居酒屋「すさみ夜市」(写真:積水ハウス提供)

■地域の誇りを取り戻す

 同プロジェクトは地域が抱える問題も解決する。

「我々の考える新しい旅のスタイルを構築するためには、今抱えている課題は何だろう?というところまで踏み込んでいきます。例えば、観光スポットが点在する宇都宮市の大谷地域では車移動がマストですが、渋滞に巻き込まれたり、駐車する場所が目的地から離れていたりするケースが多々ありました。そこで、JTBグループが開発したアプリを用いて『AI相乗り観光タクシー』を実証実験として運行したところ、周遊を促す効果がありました」

 渡部さんはこう続ける。

「現在、全国に1193カ所ある道の駅は地域のシンボルでもあります。つまり、道の駅が元気になれば、地域の誇りや愛着を取り戻すことにもつながると思うんです」

 ドライブの途中でちょっと「寄るところ」から、地域の人々の「拠(よ)りどころ」へ。道の駅が果たすべき役割は大きい。(編集部・藤井直樹)

AERA 2022年1月3日号-1月10日合併号