目盛りは対数。東京都医学総合研究所による(AERA 2021年12月20日号より)
目盛りは対数。東京都医学総合研究所による(AERA 2021年12月20日号より)

 オミクロン株の登場を受けて、岸田文雄首相はワクチンのブースター接種の前倒しを表明した。3回目の接種で変異株にどれだけの効果が期待できるのか。AERA 2021年12月20日号から。

【画像】初期の流行株とデルタ株に対する抗体値の比較データはこちら

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 懸念されているのは、変異株に対してワクチンの効果がどう変化するかだ。東京都医学総合研究所が都立病院の1139人を分析した際には、従来株に対する、感染を防ぐ効果のある「中和抗体」の量「中和抗体価」を調べた。ファイザー製もモデルナ製も従来株に対する中和抗体ができるように設計されているからだ。

 一方、研究チームは変異株に対するワクチンの効果を調べるため、別の6人の血液を使い、従来株とデルタ株に対する中和抗体価を調べた。接種完了2~3週間後でも、接種7カ月後でも、従来株に比べ、デルタ株に対する中和抗体価は約10分の1だった。

「デルタ株でもこれだけ中和抗体価が下がるので、ワクチンが標的とするウイルス表面のスパイクたんぱく質にデルタ株よりもずっと多くの変異が入っているオミクロン株に対する中和抗体価はさらに下がる可能性が高いです」(東京都医学総合研究所の小原道法・特別客員研究員)

 南アフリカのアフリカ・ヘルス・リサーチ研究所は12月7日、ファイザー製のワクチンの接種を完了した12人の血液を使い、従来株とオミクロン株に対する中和抗体価を比較した結果を公表した。

 アルファ株の前に流行していた従来株に対する中和抗体価が1321だったのに対し、オミクロン株では32と、40分の1未満だった。ただし、12人のうち感染経験者6人の中和抗体価は感染したことのない6人よりも高く、研究チームは「オミクロン株に対しても重症化を防ぐことができるとみられる」としている。

 ファイザー社は8日、オミクロン株に対するワクチンの効果に関する実験結果を発表した。ブースター接種により、オミクロン株に対する中和抗体価が2回接種に比べて25倍増えるという。その結果、2回接種で従来株に対して得られた中和抗体価とほぼ同水準になり、従来株に対するのと同じぐらいの効果が期待できるという。

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