AERA 2021年12月20日号より
AERA 2021年12月20日号より

■重症化を防げるのでは

 また、免疫細胞が認識するスパイクたんぱく質の部位の80%は、オミクロン株に生じている変異の影響を受けないという。このため同社は、「2回の接種でも、重症化を防ぐ効果は得られるのではないか」としている。

 デルタ株に対しては、ブースター接種により、効果が回復するとわかっている。イスラエルの研究チームが約114万人を調べたところ、ブースター接種終了から12日以上経った人は、ブースター接種をしていない人に比べて感染率が約11分の1、重症化率は約20分の1だった。

 3月末に国民の半数以上がワクチン接種を完了したイスラエルを始め、複数の国で今年夏以降、次々とブースター接種が進んでいる。Our World in Dataによると、12月5日現在、100人当たりのブースター接種を終えた人数が多いのはチリ(46.77人)やイスラエル(44.13人)、ウルグアイ(40.59人)、英国(30.17人)などだ。

 国内のブースター接種の具体的なスケジュールは不明だ。岸田文雄首相が「前倒し」を表明した翌日、後藤茂之厚生労働相は閣議後会見でこう述べた。

「全国民を対象に、前倒しを一律に行うことは困難」

 ワクチンがいつ、どの程度輸入できるかまだわからないからだ。ブースター接種は今のところ最初の接種の際とは異なり、高齢者優先になっていない。オミクロン株の重症化率や感染性などはまだ不透明だが、国内のブースター接種の行方も不透明だ。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年12月20日号より抜粋