「ウイルスに対して働く免疫は中和抗体だけではありませんが、ワクチンの接種が早く進んだイスラエルなどで接種の完了した人が感染するワクチンブレークスルーが多数起きた実態からも、接種から半年も経つと感染を防ぐ効果が実際にかなり落ちることがわかります」 

 小原特別客員研究員はこう指摘する。 

 接種から数カ月以上経つと中和抗体価が下がり、感染を防ぐ効果が下がるという調査結果は、国内外の研究チームから複数、出ている。 

AERA 2021年12月20日号より
AERA 2021年12月20日号より

■高齢者への効果に懸念 

 一方で、接種完了から時間が経っても、入院が必要になるほどの重症化を防ぐ効果は大きく低下しないという分析も多い。 

 医療保険を含めたヘルスケアを統合的に提供する米国の民間団体の12歳以上の会員約343万7千人のカルテを分析した研究では、ファイザー社製ワクチンの接種を完了してから新型コロナウイルス感染症で入院を予防する効果がどう変わるか調べた。2回目接種完了1カ月以内の入院予防効果は87%、接種から5カ月以降の効果は88%で、変化は無かった。 

 ただし、高齢者は中和抗体価がより低いだけでなく、重症化を防ぐ効果もより低下する可能性が指摘されている。 

 イスラエルの研究チームの、保健省の全国データベースを使った479万1398人分の分析では、60歳以上の人は、ファイザー製ワクチンの接種完了後からの期間が長くなると、重症化率は高くなっていた。接種完了後2~3カ月以内の人の重症化率は1千人当たり0.12人だったのに対し、完了から約5カ月経った人では同0.26人、半年経つ人では同0.34人だった。60歳未満の人では、大きな変化はなかった。(科学ジャーナリスト・大岩ゆり)

AERA 2021年12月20日号より抜粋