クリスマスプレゼントを巡り親子で会話してみると、意外な子どもの一面が見えるかも(写真/gettyimages)
クリスマスプレゼントを巡り親子で会話してみると、意外な子どもの一面が見えるかも(写真/gettyimages)

 娘が通う幼稚園では、クリスマスまでの準備期間である待降節(アドベント)に献金箱を作ります。待降節の間、お手伝いなど何かいいことをするたびに献金箱にお金を入れ、貯まったお金を生活に困っている人たちのために送ります。

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 実をいうとその説明を初めて聞いたときは、因果関係がしっくりきませんでした。「いいことをする→お小遣いがもらえる」ならわかるけれど、「いいことをする→お金がもらえる→人にあげる」なの? 手元にお金が残らず、子どもはがっかりするんじゃないだろうかと思ったのです。

 いやいやどうして、わたしの疑問は実に浅はかなもので、献金箱をキッチンのカウンターに置いた途端、娘はいつもより張り切って自分にできる“いいこと”をさがすようになりました。洗濯物をたたむ、食器を運ぶといったお手伝いを率先してするようになり、バスの中で静かに座る、買い物に行ってもお菓子を欲しがらないなどの生活面もピシッと整いました。弟ふたりの面倒も、いつも以上に見てくれるようになりました。

 洗濯物をたたんでと言っても、「え~テレビ見たい~」という言葉が返ってくることもあります。そんなとき「洗濯物たたんだら献金箱にお金が入れられるよ」と促すと、娘は「やっぱり洗濯物たたむ!」と俄然張り切るのです。お金を入れることがゲームのようになっている感も否めませんが、根底には「お手伝いをする→お金を入れられる→人の役に立てる」という結びつきがあるように思います。

 というのもわたし自身、同じ思いを抱いた経験があるからです。まだ親からお小遣いをもらっていなかった、小学1年生くらいの頃でしょうか。クリスマスにサンタさんから何をもらいたいかと親に問われたわたしは、「わかったさんシリーズの本が欲しい」と答えました。「わかったさんのおかしシリーズ」(あかね書房)は、楽しい物語を読みながらお菓子の作り方が身につく全10巻のロングセラー児童書。大好きすぎてすでに図書館で1から10巻まで読破していたのになぜクリスマスプレゼントに選んだのかは、まったく記憶にありません。おそらく思いつきで適当に答えたのでしょう。なぜならそれは、本当に欲しいプレゼントではなかったからです。

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大井美紗子

大井美紗子

大井美紗子(おおい・みさこ)/ライター・翻訳業。1986年長野県生まれ。大阪大学文学部英米文学・英語学専攻卒業後、書籍編集者を経てフリーに。アメリカで約5年暮らし、最近、日本に帰国。娘、息子、夫と東京在住。ツイッター:@misakohi

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