東京都も今年3月、新たな母子手帳「子供手帳モデル」を示した。早産や、発達に遅れ・違いがある場合でも記録しやすいよう配慮。低体重児用の発達曲線や支援情報一覧を掲載したほか、成長をチェックするのではなく、できた日を記録できるページも作った。母子手帳は、後半の「任意様式」部分は各区市町村の判断で作成が可能。都内19市区でこのモデルを採用している。

 母子手帳の問題を2年前から都議会で取り上げ、モデルの改訂にもかかわった都議の龍円愛梨さん(44)は、自身もダウン症のある子を育てる中で、母子手帳を開くと、発達に違いがあることが悪いことだと指摘されている気がして傷ついたという。

「母子手帳は、すべての子どもの成長を祝福するものであるべきです。加えて、子どもの特性に応じて作られている成長手帳も必要な人に手渡せるよう都の支援が始まったので、ぜひ各区市町村に利用してほしい」

親自身や関係者も動き出している。東京都豊島区に住む羽布津碧(はぶつみどり)さん(39)は今年5月、「リトルベビーハンドブックを東京都でも作りたい」とSNSで呼びかけ、小さく生まれた子どもと家族をサポートする団体「みらいbaby」を立ち上げた。月2回、交流会を開く。羽布津さんと一緒に代表を務める江東区の櫻田智子さん(40)はこう話す。

「10月に初めて対面交流会を企画したら、すぐに申し込みがありました。こういう場を求めていた人がとても多いと実感します。安心して気持ちを吐き出せる場所を作りたい」

みらいbabyを立ち上げた羽布津碧さん(右から2人目)と櫻田智子さん(左)は「ママたちに一人じゃないよと伝えたい」(photo 編集部・深澤友紀)
みらいbabyを立ち上げた羽布津碧さん(右から2人目)と櫻田智子さん(左)は「ママたちに一人じゃないよと伝えたい」(photo 編集部・深澤友紀)

■助かった命生き生きと

 こうした家族会をつなぐ全国ネットワーク「日本NICU家族会機構」が今年6月に設立された。中心になったのは、元日本新生児成育医学会理事長の楠田聡・杏林大学元客員教授と慶應義塾大学医学部小児科学教室の有光威志助教だ。18~20年に全国約400の医療機関と家族会に調査したところ、家族の交流や情報提供が足りていない現状が浮き彫りになり、家族同士の全国ネットワークが「有用」との回答が8割を超えた。同機構代表理事の有光さんは言う。

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