2500グラム未満で生まれた「低出生体重児」の家族は、発達の不安を抱え、孤立してしまいがちだ。自治体をはじめ親自身や関係者も、支援に動き出している。AERA 2021年11月22日号から。
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退院後も運動や精神発達が遅れたり、医療的なケアが必要になったりする子もいる。社会生活を送る中で、親が傷つく場面も少なくないという。代表的なのが母子健康手帳だ。
出産予定日より3カ月早く生まれて新生児集中治療室(NICU)に半年間入院し、現在は特別支援学級に通う小学2年の男の子の母親(42)は言う。
「発達曲線のグラフは体重の目盛りが1千グラムからで、862グラムで生まれた息子は記入できませんでした。成長記録は月齢相当でできることに対して『はい・いいえ』で答えるスタイルなので、『いいえ』ばかりになってしまう。記入するたびに悲しくなりました」
入学前に教育委員会と話し合う就学相談の書類には、寝返りや歩き始めの時期といった発達の記録を記入する欄があった。だが、母子手帳を開いてもわかるのは遅れていたことだけ。できるようになった記録は書かれていないため、息子の写真アルバムをめくって時期を確認した。
「子どもに発達や発育の不安がある場合、今の母子手帳では成長の記録もきちんと残せない。傷つきながらも記入してきたのは何だったのか、と思いました」
そんな中、一部の自治体で、低体重で生まれた赤ちゃん向けの「リトルベビーハンドブック」が作成され、病院などで保健師も立ち会い、配布されている。
■個人差を考慮した手帳
全国に先駆けて18年度から配布しているのが静岡県だ。早産などで小さく生まれた赤ちゃんは成長の記録や確認が難しく、母子手帳を見るたびに落ち込んでしまうという声があった。そこで地元の当事者団体や医療者と協力し、1500グラム未満で生まれた子ども用の発育曲線のほか、成長の個人差を考慮した記録欄、先輩ママ・パパからのメッセージや家族会の紹介もハンドブックに載せた。7言語の外国語版も用意している。