批評家の東浩紀さんの「AERA」巻頭エッセイ「eyes」をお届けします。時事問題に、批評的視点からアプローチします。
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秋篠宮家の長女眞子さんが10月26日に小室圭さんと結婚し、皇籍を離れた。
2人の婚約内定が発表されたのは4年前。一時は祝賀ムードに包まれたものの、圭さんの母親を巡る批判的な報道が相次いで世論は一変。9月末に圭さんが帰国し結婚の準備が始まると世論はさらに硬化し、ネットは誹謗(ひぼう)中傷で埋まり、反対デモまで起こる異常事態となった。26日午後には2人の記者会見が行われたが、それも質問なしで15分で切りあげる異例の形式となった。その会見もまた批判されている。
常識で考えてこの状況は理解を超えている。2人は報道の多くが誤りだと主張している。かりに一部が事実だとしても母親の問題と圭さんの資質は無関係だし、たとえ百歩譲って夫の資質に乏しいとしても愛し合っているのだから仕方ない。そもそも眞子さんは皇籍を離れ民間人になるのだし、複雑性PTSDの発症まで報告されている。少しは世論が軟化してもいいのではないか。
裏返せばこれは、日本人の皇室感情がいかに厄介なものかを示す事件だとも言える。皇族も人間だ、自由意思を尊重すべきだとは簡単に言える。筆者もそう思う。けれど現実には多くの人はそう感じていない。今回はそれが明らかになった。ではどうするか。今後も女性皇族の結婚はある。