教育ジャーナリスト おおたとしまささん/1973年、東京都生まれ。教育や育児の現場を取材。『ルポ
教育ジャーナリスト おおたとしまささん/1973年、東京都生まれ。教育や育児の現場を取材。『ルポ 森のようちえん』(集英社)、『正解がない時代の親たちへ』(祥伝社)など著書多数 (c)朝日新聞社

■空の下にさえ行けば

西村:うちは子どもが3人いるのですが、子どもの出産をきっかけに、先行きの見えない時代に、我が子をどうやって育てたらいいのかなと思ったのがきっかけで、活動を始めました。もともと私は大学院で森について学び、林業に関わっていたんです。結婚をきっかけに、夫の出身地である鳥取に来て、森の豊かなところで子育てがしたいなと、15年前に智頭町に引っ越したんです。デンマークに森のようちえんというのがあることを本で知って、智頭町はそういう取り組みをするのにぴったりの場所じゃないかと。発想としては、西洋から引っ張ってきたものなのですが、ここでザ・日本版森のようちえんができないかなと思い、活動したわけです。

おおた:僕も訪れましたが、西村さんのフィールドは本当にワイルドで、自然の中に子どもたちがマムシよけのために長靴を履いて入っていくんですよね。

西村:フィールドの93%が森という地域でやっています。雨が降ろうと雪が降ろうとガシガシ森に入っていく。細かいカリキュラムはなく、子どもたちが好きなことを好きな時間に好きなようにやる。そこから、本人がやりたいという気持ちが芽生えることを大事にしています。

おおた:お散歩の様子を拝見しましたが、目的地は決めるのですが、子どもたちが自由に歩いていく。一列に並ぶとかもなく、自分の能力と目的意識を照らし合わせながら、多分彼らは瞬時に森の中をスキャンして、“あ、ここ通ろう”みたいに歩いている。自分の道を進んでいくって、人生の象徴のようだなと。4、5歳にしてそれをやっているというところが印象的でした。

浅井:森のようちえんと聞くと、そうした大自然の中での活動をイメージされる方が多いのですが、私は玄関の扉を開けて、空の下にさえ行けば、どこにでも自然の恵みはあると思っています。それをキャッチすることで、子育てって楽しくできるようになるよってことを伝えていきたい。私が森のようちえんを始めたのは、自然活動を提供したいからではなく、親が子育てを楽しむ、親としての喜びを取り返したいというところからです。

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