智頭の森こそだち舎 理事長 西村早栄子さん/1972年、東京都生まれ。鳥取県智頭町在住。智頭町森のようちえん
智頭の森こそだち舎 理事長 西村早栄子さん/1972年、東京都生まれ。鳥取県智頭町在住。智頭町森のようちえん まるたんぼう園長、新田サドベリースクール(※)スタッフも兼ねる(写真:西村さん提供)

 親の側が“子どもは本当に信じて大丈夫な存在なんだ”というのを感じるのには、自然の中が一番いいと思っています。でもそれは、森でなくてもいい。空の下、自然という広い懐の中では、その子が本来持っている持ち味がキラキラできる。自然って、受け入れてはくれるんだけれども、こちらに合わせてはくれない。子どもや自然に合わせながら育児をしていく面白さ、大変さ、そういったものも分かち合えるコミュニティーがあることが大切で、そこを大事にしていきたいなと。

■学校が子どもに不適合

おおた:つまり、ワイルドな森の中に入っていかないと育児ができないということではなくて、自然の力を借りることによって、子どもの力が引き出されていくということですね。我々みたいに東京に住んでいる人からすると、森という環境はなかなか身近にないけれど、絶望的にならなくても、一歩出たら自然はあるということですね。

 僕が森のようちえんを取材して感じたのは、そういう子どもを見ることによって、大人側の視点も変わっていくということです。親は自分が1から10まで子どもに教えなきゃみたいな責任感を背負い込んで、苦しくなることがある。大人の意図の外のものを利用することによって、“こんなに子どもは自らやっていこうとする力があるのだな”と、信頼できるようになるんです。そして、お二人とも未就学児向けだけではなく、学齢期の子どもが通えるオルタナティブスクールをつくられていますね。

西村:小学校に上がると、時間割があったりと、森のようちえんとは随分と違う環境になります。子どもは適応力があるので、すぐに慣れる子がほとんどですが、中には「先生が怖い」「学校に行きたくない」と不適合を起こす子もいる。そうした子たちの受け皿として、居場所を作ったほうがいいかなということで立ち上げたのが、アメリカ発の自由な教育理念に基づくサドベリースクールです。

浅井:西村さんが今、不適合という言葉を使ってくれましたが、私はむしろ学校側が子どもに不適合を起こしていると思うんです。森のようちえん時代に、自分で感じて、自分で考えて、自分で行動を起こしてその結果を自分で引き受けるということを徹底的にやってきた子どもたちにしてみたら、学校側の決められたカリキュラムで、決められたスピードで決められた順番で、そして学校が望む評価を得ていかなきゃいけないなんていうシステムに違和感を抱くのは、ある意味当然なんです。

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