長谷川耕造(はせがわ・こうぞう)/1950年、神奈川県生まれ。「ラ・ボエム」「モンスーンカフェ」など都内を中心に複数の飲食店を展開する(写真/写真部・高橋奈緒)
長谷川耕造(はせがわ・こうぞう)/1950年、神奈川県生まれ。「ラ・ボエム」「モンスーンカフェ」など都内を中心に複数の飲食店を展開する(写真/写真部・高橋奈緒)

 コロナ禍で大きな打撃を受けた飲食業界。都内を中心に「ラ・ボエム」や「モンスーンカフェ」など複数の飲食店を展開するグローバルダイニングの長谷川耕造社長(71)が、政府のコロナ対策のつたなさについて、思いの丈を語った。

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 コロナ禍で飲食業界が標的にされたのは、政治家が有権者に「やってる感」をアピールしたかったためです。小売店もそうですが、科学的なエビデンスもないのに犠牲になりました。飲食業界はまだ休業補償が出ている分、少しは救われた面はあると思います。

 とはいえ、日本の休業補償の実態は先進国とは認められないようなお粗末な内容です。手続きが煩雑で支給も遅い。小さな店では、申請しても却下されることが繰り返されるので、諦めて営業を再開した、というところもあります。

 私が経営する会社は、米カリフォルニア州にも2店舗展開しています。日本がどれだけ遅れているのか米国との違いでお示ししましょう。

 米国にはコロナ禍で影響を受けた中小企業への支援策に「給与保護プログラム(PPP)」という制度があります。給与や賃料、光熱費など約2・5カ月分、最大1千万ドル(約11億円)までは政府が肩代わりする仕組みです。融資の形をとっていますが、雇用を維持すれば返却が免除されるため補助金の性格が強い制度です。

 カリフォルニア州では2回、ロックダウンし、その都度申請しました。外国企業であるにもかかわらず、日本円に換算して約5千万円と約7500万円がそれぞれ約2週間後に振り込まれました。申請後の審査も迅速です。従来の融資とは異なり、有事に経済を維持するための制度だということが、担当者に周知されているんです。

 この対応に接して、正直驚きました。ここまでやってくれるのかと。ロックダウンについては大反対なんだけれども、補償額を見たら許しちゃいますよね(笑)。米国はすごく賢いと思います。政策をつくる官僚のレベルが日本と全然違うんだろうなと。こうした点からも日本は本当に後れを取ってしまったんだな、と実感しました。

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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「だったら自分から名乗って営業を…」