■議員は生き残りに関心

保坂:安倍晋三前首相、菅首相と2代続けて、コロナ対策に成果をあげられず退陣します。1年前にほぼ総主流派体制で「菅船長」を選んだ結果なのに、自民党は今、コロナで悲鳴を上げている人たちに即時即応する緊急性よりも選挙でのサバイバルに政党や議員の関心が向いてきました。「コロナ失政」の構図が繰り返されています。

 東京の6人の首長で、衆院選前に当面のコロナ対策をきちんと行うために「政治休戦」をするよう、政府・与野党に呼びかけましたが、菅首相からは反応がありませんでした。今が最後のチャンスで早期に臨時国会を開き、対策を打つべきです。

 総裁選で新しい首相を選び、衆院選をすれば11月。自民党が提言に背を向けて、国会の「夏休み」が晩秋にまたがることは許されないと思います。

──かつて自民党の伊東正義さんが「本の表紙を変えても、中身を変えなければ駄目だ」という名言を残しました。今回の自民党総裁選で政治の中身は変わりますか。

中島:安倍・菅政権では、「パターナルな価値観」で「リスクを個人化する」という(4)のゾーンの政治が、8年8カ月続いてきました。

 総裁選は事実上、岸田文雄前政調会長、河野太郎行政改革相、石破茂元幹事長の3人の争いになると思います。

 岸田氏は、宏池会のイメージもあり、「リベラルな価値観」で「リスクを社会化する」という(2)のゾーンの政治に見えますが、安倍氏に推されると、「憲法9条改正」と簡単に言ってしまう。基本的に強い人に引っ張られる風見鶏です。(4)のゾーンの安倍氏や麻生太郎副総理に引きずられていく政権になる。

 河野氏は「リベラル」で「リスクを個人化する」という(2)のゾーンの政治家。例えば選択的夫婦別姓にも賛成ですが、かなり明白な新自由主義者です。自己責任論、自助論で菅政権とほとんど変わらない。ワクチン供給で地方自治体や職域接種を担当していた人の信頼を失いました。「0点」の菅首相と連帯責任があると思います。

保坂:河野氏は発信力があり、タブーに挑むイメージを作っていますが、実際に近くで仕事をすると、一方的で上から目線ですね。ワクチン供給の情報公開は、いつもタイミングが遅く、自治体も企業も大変なストレスがありました。

中島:石破氏が総裁になった場合のみ、自民党の変化が起きる可能性があります。

 石破氏もかつては新自由主義者で(3)のゾーンの政治家でした。しかし、要職を外された後に内省し、「保守本流というのは、リスクを社会化し、セーフティーネットを分厚くしていく政治だったのではないか」と(2)の路線に転換しています。

次のページ