中島岳志(なかじま・たけし、左):1975年生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。著書に『「リベラル保守」宣言』など/保坂展人(ほさか・のぶと):1955年生まれ。ジャーナリスト。96年から衆院議員3期11年。総務省顧問を経て現職(3期目)[撮影/写真部・松永卓也、小暮誠(保坂氏)]
中島岳志(なかじま・たけし、左):1975年生まれ。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授。著書に『「リベラル保守」宣言』など/保坂展人(ほさか・のぶと):1955年生まれ。ジャーナリスト。96年から衆院議員3期11年。総務省顧問を経て現職(3期目)[撮影/写真部・松永卓也、小暮誠(保坂氏)]
AERA 2021年9月13日号より
AERA 2021年9月13日号より

 菅義偉首相が辞任を表明し、自民党総裁選と衆院選の行方が混沌としてきた。「コロナ失政」が続くなか、与野党ともに国民の信頼をどう取り戻せばいいのか。AERA 2021年9月13日号で、気鋭の政治学者・中島岳志氏とコロナ対策で成果を上げる東京都世田谷区長の保坂展人氏が語り合った。

【図】いま政治の仕組みはこうなっている

 中島氏はいまの政治のあり方を理解するために、独自の枠組みを提示。政治家をリスクの「社会化派」か「個人化派」か、価値観が「パターナル(権威主義的)」か「リベラル(自由主義的)」かを基準に、以下の4つのゾーンに分類している。

ゾーン(1):リスクにはセーフティーネットで対応する「社会化派」、価値観は「パターナル(権威主義的)」
ゾーン(2):リスクにはセーフティーネットで対応する「社会化派」、価値観は「リベラル(自由主義的)」
ゾーン(3):リスクに対しては自己責任の「個人化派」、価値観は「リベラル(自由主義的)」
ゾーン(4):リスクに対しては自己責任の「個人化派」、価値観は「パターナル(権威主義的)」

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 自民党総裁選や衆院選で政治は変わるのか。『こんな政権なら乗れる』(朝日新書)を上梓した政治学者の中島岳志氏と東京都世田谷区長の保坂展人氏が対談した。

──新型コロナ対策を議論する臨時国会を開かず、自民党総裁選前に人事や衆院解散まで行おうとした菅義偉首相が、総裁選「不出馬」を表明しました。

保坂:大変奇妙なのは「コロナ対策に専念するため」という理由です。「総裁選とコロナ対策は両立できない」と言いましたが、前日までは争点つぶしのために常識的にはありえない総裁選前の人事に動くなど、総裁選に専念しようと思っていたのではないでしょうか。退陣の理由は政治家にとって一番重いひと言です。この1カ月、菅首相の言葉の漂い方はひどかったが、そのことを象徴していました。

中島:1年間、権力維持ばかりを考えてきた結果、コロナ対策をおろそかにし、かえって致命傷になっていきました。国民の命までかかっているわけですから、いい加減にしてほしいです。菅首相は人事が政治だと思い込み、権謀や策謀で生きてきたが、そこで足をすくわれた。こういう政治家を二度と首相にしてはいけないと思います。

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