令和になってはっきりしたのが、仕事をする雅子さまを尊重する陛下の姿勢だ。コロナ禍になりそれは一層はっきりし、お二人は進講の場でも新年のビデオメッセージでも、いつも横並びに座っていた。その対等さはまるで、「共働き夫婦」だと思う。

 となれば、お二人は皇室という職場の問題に気付いていないはずがない。眞子さまは「結婚」をもって、皇室という「職場」から脱出した。もちろん皇室は、眞子さまの温かい「家庭」でもあったが、それよりも出たい思いが勝ったから、儀式も一時金もいらないと判断したのだろう。

■皇室にとどまる意味

 だから「職場」の問題を解決しないと、佳子さまも、そして愛子さまも、積極的に皇室にとどまる意味を見いだせなくなる可能性は大いにあると思う。「眞子さま婚」が眞子さまだけにとどまらず、佳子さま、愛子さまに波及する。そうして「女性皇族離脱ドミノ」が起こっても不思議ではないと思うのは、長く仕事をしてきたから。だって、やりがいの感じられない職場を脱出する手段が結婚で、結婚すれば自由が手に入る。相手が「ふさわしい」か「ふさわしくない」かは自分で決める。眞子さまが敷いたその道を魅力的と感じ、ついていこうとお二人が思ったとしても、何の不思議もない。

 ところで、なのだが、陛下と雅子さまは東京五輪にあたり、「広報方針」を変えたと思う。生真面目(きまじめ)な前例踏襲型だったのが、陛下は開会式での宣言を「祝う」でなく「記念する」と大胆に踏み込んだ。

「天皇は、国政に関する権能を有しない」という憲法の規定は承知の上で、国民に寄り添うと決めたのではないだろうか。選手たちは応援したい、感染拡大は心配。そんなシンプルな思いを共有する。それが直接国民と触れ合えないコロナ禍で、皇室の存在意義を保つ道。そう思っているのだと想像している。だから陛下と雅子さまは、女性皇族がどうあるべきか、考えだしているに違いない。

 今回、眞子さまの結婚が公になったのは、母である紀子さまのお誕生日が9月11日に迫っていたことが関係していたはずだ。誕生日にあたり文書を出すのが恒例で、その際、眞子さまのことは避けて通れない。

 雅子さまのお誕生日は、12月9日。陛下は2月23日。まだ少し時間はある。女性皇族についての考えを述べるには、とてもよいタイミングではないだろうか。(コラムニスト・矢部万紀子

AERA 2021年9月13日号

著者プロフィールを見る
矢部万紀子

矢部万紀子

矢部万紀子(やべまきこ)/1961年三重県生まれ/横浜育ち。コラムニスト。1983年朝日新聞社に入社、宇都宮支局、学芸部を経て「AERA」、経済部、「週刊朝日」に所属。週刊朝日で担当した松本人志著『遺書』『松本』がミリオンセラーに。「AERA」編集長代理、書籍編集部長をつとめ、2011年退社。同年シニア女性誌「いきいき(現「ハルメク」)」編集長に。2017年に(株)ハルメクを退社、フリーに。著書に『朝ドラには働く女子の本音が詰まってる』『美智子さまという奇跡』『雅子さまの笑顔』。

矢部万紀子の記事一覧はこちら