■人手不足対策のコマ

 私はかねてから、女性皇族にとって皇室は「寿退社が明文化された職場」ととらえていた。皇室典範12条に「皇族女子は、天皇及び皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」とあるからだ。眞子さまの叔母にあたる黒田清子さんは、結婚の3年前、33歳のお誕生日に「内親王という立場」について語っている。

 まとめさせていただくと、こうなる。「女性皇族ということを意識することはあまりなかったが、内親王として将来、立場を離れることを思うと、継続的な責任ある立場に就くことを控えたことはあるかもしれない」

 清子さんは上皇陛下と美智子さまの一人娘として、ひたすら真面目に公務をした女性だ。が、寿退社という壁に阻まれ、責任ある立場は遠ざけたというのだ。寿退社職場に、愛着を持つのはなかなか難しい。だから、女性皇族という立場の曖昧(あいまい)さを何とかしてほしい。そう何度も書いてきた。

 ほんの少しだけ望みをかけていたのが、安定的な皇位継承のあり方を議論する政府の有識者会議(座長・清家篤元慶應義塾長)だった。4月にスタートした時、女性皇族の幸せを検討してほしいと思い、そのことも書いてきた。が、7月26日に出された「今後の方向性」を見て、がっくりした。

 女性皇族が結婚後も皇室にとどまる案と、旧宮家の男系男子が養子として皇族復帰する案を検討していくという。それだけで、女性皇族のあり方についてはまるで触れられていない。政府は女性皇族(と、かつて皇族だった男系男子)を単に人手不足対策のコマと見ている。

 と思っているのは、外野にいる私だけだろうか。そう考えた時に、頭に浮かぶのが愛子さまだ。冒頭に書いたように、12月1日に20歳を迎える。公務を始めることになるから、愛子さまにとって皇室は「家庭」であると同時に「職場」にもなっていく。そして、ここまで書いたように、問題ありの上に政府による改善がまるで期待できない職場なのだ。

■対等さは「共働き夫婦」

 雅子さまは外務省でのキャリアを中断し、皇太子妃となった。婚約内定の記者会見で、外務省について「大変やりがいのある仕事もさせていただいておりましたし、(略)とても充実した勤務でございました」と振り返っている。「職場のやりがい」を実感した女性として皇室外交を期待したが、まず望まれたのが男子出産だった。なかなか妊娠がかなわず、結婚8年後に愛子さまが生まれたが、その2年後に長期療養に入った。

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