専門家も驚くような速さで開発され、新型コロナウイルスのパンデミックを克服する「切り札」と期待されたワクチン。世界各国で接種が進むにつれ、副反応の報告からその実態が明らかになってきた。AERA 2021年9月6日号は「ワクチン」特集。
【最新データ】こんなに違う!3社各ワクチンの副反応を徹底比較
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新型コロナウイルスの感染爆発が止まらない。政府は8月27日、緊急事態宣言などの対象地域をさらに拡大し、緊急事態宣言は21都道府県、まん延防止等重点措置は12県が対象となった。
そんな中、感染抑制の切り札として菅義偉首相がすがる「ワクチン」の接種が、多い時には1日150万回を超えたこともある勢いで進められている。23日には、国内で初めての英アストラゼネカ社製ワクチンの接種が、大阪城ホール(大阪市)の集団接種で始まった。これで厚生労働省が特例承認した3種類の新型コロナウイルスワクチンすべてが出そろった。
国内で接種が始まったのは今年2月。英米などのワクチン先進国に約2カ月遅れての開始だった。医学的な必要性や社会的な機能を維持する必要性に応じ、あらかじめ接種の優先順位が決められ、まず医療従事者を対象に始まった。しかし、東京五輪・パラリンピック開催を念頭においた菅首相の掛け声のもと、優先順位は無視され、医療従事者が半分も接種を終えていない4月に高齢者への接種が始まった。
その後、がんや糖尿病などの病気があって重症化リスクが高い人への優先的な接種が担保されないまま、大規模接種会場や職場、大学などにおける集団接種、子ども対象の接種まで始まった。
医療従事者への接種が終わったのは7月23日だ。接種する医療従事者がまだ接種を受けていないという事態が生じただけでなく、感染者の搬送を担う消防隊員が、接種が終わらないうちに感染して亡くなった。
内閣府によると、8月24日時点の累積接種回数は延べ1億2222万3024回だ。高齢者では接種を完全に終えた人が86.5%に達した。一方、国民全体では接種を終えた人は42.6%だ。英オックスフォード大が事務局を務める「Our World in Data」によると、シンガポール(73.4%)やスペイン(67.7%)、英国(61.8%)、米国(51.2%)など、日本より接種を終えた人の割合が多い国は多数ある。