「彼らがやっていることは犯罪です。でも日本ではなぜかロマンがあると思われ、テレビ番組でも取り上げられる。彼らが人類にもたらしている害を正しく知ってほしい」

 伝えたかったのは「好きなこと、やりたいことを見つけることの大切さ」でもある。

「多くの人は『やりたいことは待っていればいつか来る』と思っている。でもそれを見つけるにも努力が必要です。博士号を取るまでの勉強は大変だったけれど、楽しくて苦労している感覚はなかった。たぶん『鉄ちゃん(鉄道ファン)』と同じです。エンジン音を聞いただけで電車の種類がわかるのも好きだからこそですよね。好きなことさえ見つけてしまえば勉強も努力も苦にならない。野球で挫折したかつての自分のように、いわゆる『一軍じゃない人』に届けばいいな、と思っています」

 海洋国家・日本にも多くの沈没船が眠っているはずだ。しかも沈没船は港や海岸近くで見つかることが多い。恐竜の化石を子どもが偶然見つけるように、水中考古学が広く知られることで、新たな発見につながればと期待する。

「海岸で犬の散歩中に見つけた木材は、江戸時代の沈没船のものかもしれませんよ」

 これから砂浜を歩くときは、よくよく目を凝らしたい。(フリーランス記者・中村千晶)

AERA 2021年8月9日号