会議にはやすこ先生とあーちゃんも同席することに決まりました。学校には事前に、入院時から酸素療法導入までの状況を簡単に伝え、詳細は看護師さんがいる会議の場で共有したいと伝えると、なんと「ナースは会議に出席しません」と言われてしまいました。

■医療的ケアが進まない理由

 校内で酸素を使用するとしたら、扱うのは教員ではなく看護師さんです。話し合いや調整が必要なはずなのに、一体どうしてなのだろう?

 なんとなく校内のすみ分けが垣間見え、医療的ケアが進まない理由がここにあるような気がしました。どうして看護師さんが出席できないのかを県に確認したところ、その直後に再度学校から連絡があり、「ナースも同席することに決まった」と言われました。

 本当に、これはどういうことなのだろう?

 そして会議の日。

 まずは現在の長女の身体の状態と家族の気持ちを教えてほしいと言われ、私が話しました。

 側弯が進行して右肺の4分の1ほどが潰れていること、日中は元気なものの、睡眠時のSpO2値がたびたび90を切り、夜間は酸素を使用していること、そう遠くないうちに日中も酸素吸入が必要になるかもしれないこと、できる限り今と同じ生活をさせたいと思っていること。

「ゆうは学校という単語がわかるほどに、この学校や先生が大好きだと思います。先生方がとても可愛がって下さり、家ではできないダイナミックな遊びをたくさんしていただいて、本当に感謝しています。これからも今まで通りに登校してほしいと思っています」

 そして、あーちゃんが医学的な見解を補足してくれ、やすこ先生が母子分離の大切さを話して下さると、学校側からは具体的な要望を聞かれました。

■学校に責任を問わないと書いてもいい

「当面の希望は、毎日酸素を持って登校し、苦しくなった時に使っていただくことです。今、頻繁にSpO2値を測っていただいているようですが、あらかじめ値を決めておいて、それよりも下がった時に使っていただけたらありがたいです」

 酸素は吸いすぎると毒になる場合があります。そのため、登校時から一定量を流し続けるのではなく、身体の状態に合わせて調整できる環境が理想でした。

 酸素ボンベの流量調整は全国でもまだ例がないと聞いていましたが、あえて提案しました。酸素吸入というと大変なケアに聞こえるかもしれませんが、実際はボンベの口をひねって酸素を出し、マスクを顔に当てるだけの、ゆうの双子の妹のぴぴにもできる簡単な処置です。

 そして同時に、万が一予期せぬ事態が起きたとしても、学校には絶対に責任を問わないと書面に残してもよい、と伝えました。医療的ケアの妨げになる原因のひとつとして、責任問題があると思ったからです。

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沈黙の後、校長先生は…