室内を天井近くまであるパーティションで仕切り、ドライアイスから出る白煙を感染者の呼気に見立てた。ドライアイスをたくと通常冷たい煙は下方に溜まりがちだ。ファンで空気をかき混ぜ、煙の温度を室温にまで上げて、感染者のせきや呼気などから出る、ウイルスを含むマイクロ飛沫と同程度の温度になってから検証した。

「空気はパーティションの隙間からほとんど漏れませんでした。部屋でタバコを吸った後のように、ドライアイスの煙はパーティションで区切られた空間に充満しました」(石垣特任准教授)

 煙の濃度を計測すると、パーティション内の空気は1時間に0.1回だけしか入れ替わっていなかった。商業施設などで「換気の悪い空間」を避けるために窓開け換気をする場合、厚生労働省が推奨する換気は1時間に2回以上。この基準の20分の1しか換気できていないことになる。

 このオフィスは換気システムがなく、冬場だったため、窓も閉め切っていた。換気という意味では絶望的な条件に思える。

■設置の高さにカギ

 だが、同じパーティションのままでも、窓を開けファンを稼働させると、換気量は窓を開けない場合の100~280倍になったという。

 このことからこのケースではパーティションの設置と換気、二つの課題があったとみられる。

 では、どうすれば、感染を効果的に防止できるのか。

 石垣特任准教授は、パーティション設置のポイントをこう解説する。

「まずは、空気の流れをパーティションで遮らないようにすることです。パーティションは、人の頭から口元をカバーするように、高さを調整してください」

 効果のある具体的な高さは今後調査するというが、座る場合、人の頭の高さである120センチが目安だという。立って働く場合は身長に合わせる。床まで仕切る必要はなく、オフィスの場合は、口元付近までをカバーすればいい。

 本当に口元から下はカバーしなくても大丈夫なのか。もし、ウイルスを含む飛沫が手につけば、感染の原因となるのではないか。たとえば、せきをすると、飛沫はあらゆる方向に飛び散る。その範囲は約1~2メートルとされる。

 だが、東京理科大学の倉渕隆教授(空気調和・衛生工学会副会長)は、こう指摘する。

「本来、手はパーティションで守る対象ではありません。くしゃみや会話で出る飛沫が、直接顔にかかるのを防ぎ、ウイルスを口や目、鼻などの粘膜から体内に入れないようにするのが、パーティションの役割です」

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