つまり、パーティションの役割はあくまで「飛沫感染」を防ぐことにあり、手や体に付着したウイルスによる「接触感染」を防ぐことではないのだという。
「『接触感染』は、手をこまめに洗い、飛沫のついた表面をきれいにすることで防ぐことができます」(倉渕教授)
■1時間に2回窓を全開
ただし、飲食する場合は、皿や食べ物についた飛沫を口に入れないように、人の頭から机までを仕切るほうが望ましい。飲食店での感染対策でよく見かける、卓上から着席した人の頭くらいまでをカバーするアクリル板は、パーティションの置き方としては適切ということだ。
密室化を防ぐという意味では、パーティションは空気を滞留させる恐れのあるコの字形に仕切るのではなく、風通しのよいI字形が望ましいという。
「アクリル板が大きい場合は、人の前にだけ置き、敷き詰めないようにすれば空気の通りがよくなります」(石垣特任准教授)
その上で、石垣特任准教授は換気の重要性をこう強調する。
「パーティションの置き方を変えても、部屋の空気が入れ替わらなければ、対策の意味はありません。エアコンに通常は換気機能はないので、まずは、建物の換気システムを入れること。換気システムがない場合も、窓を開けて、ファンなどを使って空気の逃げ道を作れば、空気は循環します」
換気システムがない場合は、必要に応じて窓を開ける。厚労省は、1時間に2回以上、数分間程度、窓を全開にすることを勧めている。
ただし、換気をする上で注意点もある。空気の入り口と出口となる窓や扉を、対角線上に開けることだ。窓や扉を一つだけ開けても、ほとんど空気が入らなかったり、入ってもすぐに出たりしてしまう。
■ファンは人に当てない
ファンで空気の排出を促進することもできる。窓に向かってファンを回し、ウイルスを含む可能性のある空気を排気するのがセオリーだ。その風を人に当てないように注意したい。
私たちが換気が必要な目安を知ることはできるのか。
「空気がよどんでいると感じたり、場所によってエアコンの利きが違うと感じたりしたら、換気のサインです。換気システムがある場合も、窓を対角線上に開けて、空気の入れ替えをすることをお勧めします」(倉渕教授)
換気ができているか、数値で確認する方法もある。
「CO2センサーで二酸化炭素の濃度を測定すれば、換気の状況がわかります。二酸化炭素の濃度1千ppm以下(空気中の二酸化炭素濃度が0.1%以下)であれば、換気ができていると考えてよいでしょう」(同)
パーティションがあるからといって安心ではない。適切な設置と換気で対策を心がけたい。(ライター・井上有紀子)
※AERA 2021年6月21日号