電気通信大学の石垣陽特任准教授がパーティションの中で、感染者の呼気が滞留する様子を再現した。空間が密室と化していた(写真:石垣特任准教授提供)
電気通信大学の石垣陽特任准教授がパーティションの中で、感染者の呼気が滞留する様子を再現した。空間が密室と化していた(写真:石垣特任准教授提供)
AERA 2021年6月21日号より
AERA 2021年6月21日号より
AERA 2021年6月21日号より
AERA 2021年6月21日号より

 新型コロナウイルスの感染対策としてすっかりおなじみになった、オフィスや飲食店のビニールシートや アクリル板のパーティション。安心の目安になると思いきや、思わぬ落とし穴があるという。AERA 2021年6月21日号から。

【実験】パーティションで区切られた空間で空気はどうなる?

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 オフィスや飲食店での感染対策として、パーティションの設置はすっかり定番になった。座席や区画を仕切るアクリル板やビニールシートを目印に、「自分のオフィスは大丈夫」「このお店なら大丈夫」と心強く感じている人も多いはずだ。

 だが、このパーティション、置き方を間違えると、感染予防ではなくクラスターの原因となりかねないという。

 電気通信大学の石垣陽特任准教授(情報工学)らのチームは、5月27日、パーティションについての注意すべき研究結果を発表した。パーティションが空間を遮蔽して空気を滞留させてしまい、換気に悪影響を及ぼし、結果として感染拡大の一因となる可能性があるという。

 きっかけは、3月下旬、宮城県内のオフィスで発生したクラスターだった。30人ほどのオフィスで計11人が感染した。

「このオフィスも感染対策としてビニールシートのパーティションを設置していました。調査を行うと、このパーティションによって空気が滞留し、感染が広まったと考えられることがわかったのです」

 オフィスの広さは180平米ほど。向かい合わせに並べられた机が5列ほどの島をつくっていた。向かい合う席の間は透明のビニールシートで仕切られた。ビニールシートは高さ160センチ、天井との隙間は80センチで、下は床まで垂れ下がっていた。対面部分だけでなく、いくつかの列の通路側にもビニールシートを設置していた。

■パーティション内で感染

 これだけを聞くと、適切な感染対策に思える。だが、実際には、このオフィスで2人の感染者がほぼ同時に出た数日後、次々に複数人の感染が判明、クラスターになった。感染したのは、パーティションで区切られた同じエリアにいた人たちだった。

 石垣特任准教授は、「縦方向に長すぎるパーティションが原因のひとつでは」と指摘する。

「パーティションは天井の隙間は十分ではなく、床との間も空いていなかった。パーティションで区切られたエリアが密室化し、空気が滞留してほとんど入れ替わっていなかった恐れがあります。隣接する席だけではなく、背中合わせに座っていた人も感染しました」

 石垣特任准教授は空気の循環を調べるため、クラスターが起こったオフィスの環境を再現し、実験を行った。

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