【海まで10分の新天地で通勤ラッシュから解放】稲葉研悟さん、貴絵さん/東京都小金井市→神奈川県茅ケ崎市/海まで自転車で10分ほど。休みは家族で海までピクニックに行く。平日昼は仕事の合間に、海を眺めて気分を切り替える(撮影/井上有紀子)
【海まで10分の新天地で通勤ラッシュから解放】稲葉研悟さん、貴絵さん/東京都小金井市→神奈川県茅ケ崎市/海まで自転車で10分ほど。休みは家族で海までピクニックに行く。平日昼は仕事の合間に、海を眺めて気分を切り替える(撮影/井上有紀子)

 コロナ禍で働き方が変わり、東京近郊への移住に憧れる人もいるだろう。AERA 2021年5月31日号は、観光地としても人気の湘南エリアや軽井沢の生活実態に紹介する。

【トップ30】東京23区からの移住が増えた近郊自治体はここだ!

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 移住に意欲を示すのは、都心に住む人たちばかりではない。テレワークの普及で、毎日の通勤地獄に苦しまなくてもすむようになれば、ラッシュが激しい鉄道沿線に住まなくてもいい。

■通勤地獄から天国へ

 昨年7月、東京都小金井市から神奈川県茅ケ崎市に移った人材系企業勤務の稲葉研悟さん(35)もその一人。JR中央線で1時間かけて通勤していたのが、移住後は週1回。会社まで30分ほど遠くなったが、座って通えることもある。

 大手メーカーに勤める妻の貴絵さん(35)もほとんどテレワーク。長女(6)が小学校に入ることもあり、移住を考えていた。そんな時、民泊仲介サイト「Airbnb」で茅ケ崎の個人宅に泊まった。同い年の子どもがいる家族と意気投合。長男(3)と海で遊べるのも決め手になった。

 新居は大きな窓から光がたくさん入り、遠くに富士山が見える。天井が高く、都内の家のような閉塞感(へいそくかん)はない。自転車で10分走れば浜辺に出られる。

「早く起きたり仕事が煮詰まったりしたとき、海に行って散歩する。気持ちがすっきりして、オンオフが切り替わります」

 と研悟さん。晴れた日は浜辺で弁当を食べる。波のきらめきを見ながら、貝殻や石を探す。ソーシャルディスタンスも気にならない。貴絵さんは言う。

「この1年はコロナで近くの友達とも会えなくてLINEしていました。だから友達との心のつながりに物理的な距離は関係ないと実感しました。都内では子どもを買い物に連れていくこともあり、消費ではなく自然に触れるような体験をさせたい」

 近所は昔ながらの家もあれば、東京から移住してきたという家もある。つかず離れずの距離感がちょうどいいという。

「ゴミ出しのとき、近所のおじいさんが『もう慣れたかい』と聞いてくれて。こどもの日にかしわをわざわざプレゼントしてくださる方もいました。といっても、それぞれの生活に楽しみを見つけている方が多いので、過度な干渉はない。都内からの移住者も多くて、ママ友もできました」

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