湘南に特化した雑誌「SHONAN TIME」の富山英輔編集長は、25年前に横浜から移住した。「最近は問い合わせが増え、物件が少なくなってきていると不動産会社から聞きます。オーナー自ら湘南の雰囲気を気に入って移住し飲食店などをオープンするケースも多く、各ジャンルでいい店が増えています。10年ほど前までは、美容院やとっておきの日のディナーは東京や横浜に行く人が多かったですが、最近は湘南で済ませる人が多くなりましたね。昔の静かな湘南がよかったという住民もいますが、移住者がいるから、町そのものが若返っているのだと思います」

■軽井沢は「北麻布」

 東京からは離れるが、軽井沢の人気も急上昇している。20年の転入者は伸び、23区からだけでも7割増加。この1年でワークスペースが20カ所以上できたという。古くからの別荘地で生活環境が整っており、北陸新幹線なら東京駅から1時間余りで着く。軽井沢のエリアマーケティングに詳しい信州大学社会基盤研究所の鈴木幹一特任教授はこう話す。

「軽井沢で出会う別荘の人は港区の人が多く、『北麻布』と呼ばれることも。ここ数年は東京の家を引き払って移住する若者が増えています。土地の高い旧軽井沢よりも、比較的安い中軽井沢や追分、さらには隣町の御代田町、小諸市も人気。車で30分の軽井沢経済圏にほどよい自然と都会感を求めて、オンラインで仕事をする価値観がコロナで広がっています」

 4~5月にオンラインであった「軽井沢経済圏 移住・リゾートテレワークフォーラム」では、地元で暮らすパネリストが、人気の理由を語った。
「軽井沢に移住する人たちは同好会の仲間みたいなもの。同じ価値観を持っているから、気が合いやすい。東京ではたくさんの人とすれ違うが、実際に交流するわけではない。軽井沢では人数が限られるだけに、一人ひとりの付き合いを大切にする」

 移住者どうしのコミュニティーが生まれ、そこに入り込めば、新たなビジネスや交流ができるというのだ。

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