「るるぶ宇宙」では、「月周回旅行」や「サブオービタル(準軌道)宇宙飛行」といった、さまざまな旅行プランを紹介している(撮影/写真部・辻菜々子)
「るるぶ宇宙」では、「月周回旅行」や「サブオービタル(準軌道)宇宙飛行」といった、さまざまな旅行プランを紹介している(撮影/写真部・辻菜々子)

 老舗旅行情報誌「るるぶ」の宇宙版が話題を集めている。発売直後から売り切れが相次ぎ、コロナ禍で異例のヒットを飛ばしている。AERA 2021年5月17日号では、話題沸騰中の「るるぶ宇宙」発売の裏側を取材した。

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「るるぶ宇宙」は3月30日に全国で発売された。その斬新な内容から、すぐに書店やネットで注目の的になった。ジュンク堂書店池袋本店(東京)の担当者によれば「ウチでは理工書フロアに置いていますが、初動がかなり早かった。最初の10日で完売になり、追加分も3日ほどでなくなり、重版分が入ってくるまでしばらく売り切れ状態でした」。東京・神保町の書店でも、品切れが相次ぐ。

■ISSを「徹底解剖」

 1984年に第1号が発刊された「るるぶ情報版」は、2010年に通巻4千号を突破。「発行部数世界最多の旅行ガイドシリーズ」としてギネス世界記録に認定されている。そんな「るるぶ」でも、地球を飛び出した号は初めてだ。

「コロナ禍で、旅行情報誌は結構なダメージを受けました。特に海外ものは難しく、そういう状況の中で新しいことにチャレンジしようとなりました」

 こう話すのは「るるぶ宇宙」の編集に関わったJTBパブリッシングの有泉慧さん。昨年5月、全社員から従来の枠にとらわれない企画を募った。そこで出てきたのが、宇宙旅行。これまでも「宇宙旅行の本ができると楽しそうだよね」という声は上がっていたが、実現に至っていなかった。

 しかし、小惑星探査機「はやぶさ2」の帰還、野口聡一さん、星出彰彦さんという日本人宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)への飛行が20年、21年と続くことから「このタイミングで」となった。

「編集者はみな宇宙に関して初心者。しかも“宇宙旅行”という点でどう『るるぶらしさ』を出すか。その点に苦労しましたね」と有泉さんは言うが、旅行好き、るるぶ好きの目をそらさせない構成になっている。

 冒頭を飾るのは「ISS大特集」。NASAは19年、ISSを商業活動の場としてオープンにし、民間人を最大30日間、年2回受け入れると発表した。

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