まず、対面では競合の話題や比較を出したり、なぜ自分が提案するのかという「感情的な理由づけ」があったりすると成約しやすいのに対し、オンラインでは「数値的根拠」が多いほうが成約率が高まる。

 二つ目は、前出の製薬会社とのプロジェクトでも明らかになった「オンラインでは売り手が多くしゃべりがち」なことだ。

 三つ目は、オンラインでは対面でないがゆえに率直な話を切り出しにくい傾向が見られること。迷っている相手の決断を促す語句を「クロージングワード」と言うが、オンラインで不成約だった商談ほどそれらのワードが少なかった。同社の河野理愛社長は言う。

「解析してみると自社の勝てるトークのモデルからかけ離れているのに結果を出している人が見つかることもあります。そういう人はスキルより『キャラクター売り』。教育係にはモデルに近い人を選ぼうといった判断もできます」

 会話の中身の解析を手がけるコグニティに対し、会話の速度やラリーの回数、発話がかぶった回数などを可視化するサービスを展開しているのが、レブコムだ。同社はAIを搭載したIP電話MiiTel(ミーテル)とそのビデオ会議版であるMiiTel Live(ミーテルライブ)を提供する。

 現在までに累計450社以上が導入しており、そのうちの一社がクラウド経費精算サービスを手がけるマネーフォワードだ。

 同社でインサイドセールス(電話やウェブを使った内勤型営業)部門の教育・マネジメントを担当する横田英子さんによると、新人の教育期間が3カ月から1カ月に短縮。電話営業から実際の商談につながる件数も導入前の180%超に達した。

「指導する際もトークを全部聞かなくても、ラリー回数が多く盛り上がっているところだけとか、先に設定しておいたキーワードが出てきたところだけをピンポイントで聞けるので、効率的になりました」(横田さん)

 横田さんが特に重視するのは、「沈黙の回数」だという。沈黙がなくスムーズに会話が進むほうが一見良さそうだが、横田さんによると「沈黙の間があることで、お客様は考えを巡らせたり、悩みを話し始めたりします。だからそれを待たないといけない」。3分に1回くらいの割合で沈黙があるのがちょうどよいのだという。

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