大人も子供も「うっせぇわ」と叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。子供の言葉遣いが悪くなって困る、なんて親たちは心配するが、それも「うっせぇ!」(撮影/写真部・高野楓菜)
大人も子供も「うっせぇわ」と叫ぶ、叫ぶ、叫ぶ。子供の言葉遣いが悪くなって困る、なんて親たちは心配するが、それも「うっせぇ!」(撮影/写真部・高野楓菜)

 大人社会に呪詛を投げつける歌が大ヒット。社会現象となるほどの人気だ。入社したての25歳記者と田舎のロートル57歳記者が、聴いた。考えた。AERA 2021年3月22日号の記事を紹介する。

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 男性の同僚から引き継いだ取材先には「おたく、色仕掛けにギアチェンジしたの?」、相談すれば最後まで聞かず「そんなの甘え。おれが若手のころはぁ~(以下武勇伝)」。

 うっせぇ、うっせぇ、うっせぇわ!

 わたし(若いほう、女性)も、叫び出したいことは、ある。ない人なんて、いるのか?

 Adoが歌う「うっせぇわ」が大ヒットしている。オリコンのデジタルシングル(単曲)ランキング、ストリーミングランキングで、2月にともに1位。

 歌い手のAdoは女子高校生。作詞作曲のsyudouは、どうやら社会人経験のある若い男性らしい。

「最新の流行は当然の把握/経済の動向も通勤時チェック/純情な精神で入社しワーク」

 そんな“ルール”を強制する社会に「うっせぇ!」。

 グラスがあいたら酒をつげだの、串焼きから肉を外して食べやすくしろだの、だりぃ大人の“マナー”に「うっせぇ!」。

 自分は天才で、現代の代弁者。自分以外は一切合切凡庸。悪罵の限りを尽くすのも、「頭の出来が違うので問題はナシ」。

■自分を世界から遮断

 過激な歌詞とキンキーなボーカル、メタリックな激しい曲調。

「Ado聴きながら出勤してうっせぇわのマインドで仕事してる」「これ、上司の前で歌えたら気持ちいいべなー」「心底見下して嗤ってる感じがゾクゾクする」など、ネットは絶賛の声であふれる。

「令和の反抗ソング」とも称賛されるこの曲を聴いてわたし(若いほう、女性)が抱くのは、しかし、どこか居心地の悪い、いたたまれない気持ちなのだ。

 歌詞から推して、歌う主体=主人公は、おそらく社会人数年目の若者。もう立派な大人だ。それが、周囲の大人へ、むき出しのヘイトを向ける。「ちっちゃな頃から優等生」だった自分は、まだ「遊び足りない」「何か足りない」。それは「誰かのせい」。

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