■チームの平等性保つ

 言葉の意味内容ではなく、「他人にどう聞こえるか」に注目。発話の割合や速度の差、かぶりなどを可視化するほか「喜び」「平常」「怒り」「哀しみ」の四つの感情と、元気度を割り出す。言語を問わないため、開発者向けに提供しているWeb Empath APIは世界50カ国以上の約2800社で導入され、国際的なピッチコンテストでも10回近く優勝している。

 国内では、オペレーターの離職が激しいコールセンターのメンタルケアなどに使われてきた。コールセンターの「応対品質」に関して、高い評価を得ているパフォーマーと低い評価のパフォーマーの感情を可視化した。ハイパフォーマーは、「平常」の感情が高位安定し、応対の回数を重ねてもあまり変動がない。それに対して、ローパフォーマーは、平常の他に「喜び」「哀しみ」など感情が入り交じり、起伏も激しいことがわかる。

「声からメンタルの状態が把握できることで、精神状態が悪化する前に適切なケアを行うなどの対応も可能になります」(下地さん)

 こうした技術をウェブ会議に応用したのが前出のリモトーキーの試作版。

「今後は、誰が会議のファシリテーターをすると議論が盛り上がるのかとか、どんな工夫をすれば沈黙しがちな人が気持ちよく発言できるか、といったこともわかるようにしていきたい。メンバーの誰かの『元気度』が落ちているとわかれば、声がけをするなどのケアもできる。チームビルディングにも役立つはずです」(同)

 会議で発言を遮られたり、強引に黙らされたりするのは、圧倒的に女性や、人種的・民族的マイノリティーのほうが多いという学術研究も出ている。

「音声感情解析の技術を応用すれば、誰が誰の発言を遮っているか、そのとき参加者の感情がどう動いているかなどもわかるようになるでしょう。チームの平等性の担保にも役立つサービスにしたいですね」(同社共同代表の山崎はずむさん)

(編集部・石臥薫子)

AERA 2021年3月22日号より抜粋