保健所の職員は連日感染者の対応に追われている。室内は感染防止のため、透明なシートで仕切られている (c)朝日新聞社
保健所の職員は連日感染者の対応に追われている。室内は感染防止のため、透明なシートで仕切られている (c)朝日新聞社
AERA 2021年2月8日号より
AERA 2021年2月8日号より

 コロナ対応の司令塔である保健所で、多くの保健所職員が悲鳴を上げている。濃厚接触者の特定や入院調整に追われ、患者のケアができないことに苦しむ人もいる。AERA 2021年2月8日号から。

【グラフ】1日中対応に追われる保健所職員の様子はこちら

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 大阪府の保健所で働く40代の保健師の女性は、60連勤を超えた。朝9時前には職場に到着、終電の時間を過ぎても仕事が終わらず、タクシーで帰宅した日は数えきれない。

「家に寝に帰っているだけでした。1年以上、家のことは何もできていません。『このままだったら、職員が死ぬで』と上司に訴えたこともあります」

 府内では1日の新規感染者数は400人を下回りつつあるものの、1月27日の1日あたりの死者数は過去最多の23人となった。重症患者の病床使用率は80%を超え、医療機関は逼迫している。現在、この保健所で一番労力を割いているのが、感染者をどこに入院させるかの調整だ。女性は言う。

「大阪では本来、府がつくったフォローアップセンターが調整するのですが、問い合わせても受け入れられる病院はないと言われたり、遠くの病院を紹介されたりすることが頻繁にある。悪化のリスクが高いと思われる人でも、入院させてあげられない。でも、自宅療養になれば危険です。なので、センターを通さずに、私が直接、病院に交渉しています。保健師だから府内の病院は知っています。日頃からのつながりを総動員させて、命を守らなきゃいけない」

 保健所は、コロナ対応の司令塔だ。陽性反応が出たら患者に伝え、入院が必要かどうかを判断し、入院先選びをする。入院患者の症状をチェックし、自宅療養者に対する健康観察も毎日欠かさない。濃厚接触者の特定と追跡という「積極的疫学調査」も行う。治療以外のすべての対応を担っているといっても過言ではない。

 だが、感染拡大というこの有事にあって、圧倒的に人手が足りない。保健所数は過去30年で45%も減少し、保健所職員は19%減の2万7千人になった。浜松医科大学の尾島俊之教授(公衆衛生学)は言う。

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