東京都も1月22日に都内の保健所に同様の通知を出した。

 全国保健所長会の内田勝彦会長(大分県東部保健所長)は、保健所の負担を減らす必要性があると認めつつ、濃厚接触者を特定しないことに危惧を抱く。

「コロナ以降、保健所の仕事の8割が濃厚接触者の特定になった印象です。この保健所で陽性者が1日あたり15人くらいなら対応できると思いますが、都市部の保健所ではその数倍になっています。しかし濃厚接触者が追えなくなると、街中に無症状者を含め、どれくらい感染者がいるのかわからなくなる。年明けの緊急事態宣言で感染者が減っているが、またぶり返す恐れはあります」

 一方、医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は、そもそも現在の濃厚接触者の特定方法自体に問題があると指摘する。

「コロナは既に蔓延しているので、感染者の周りだけを調べても効果は薄い。濃厚接触者の特定にこれだけ労力をかける意味があるのか疑問。PCR検査の無作為抽出のほうが現実的です。保健師さんや保健所職員も、自宅療養中や入院前の患者さんのケアに集中できます」

(ライター・井上有紀子)

AERA 2021年2月8日号