豊福晋平(とよふく・しんぺい)/国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授 (c)朝日新聞社
豊福晋平(とよふく・しんぺい)/国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)准教授 (c)朝日新聞社
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 あらゆる分野でデジタル化が進む中、取り残された教育の世界。日本ではなぜICT教育が遅れたのか、また成功させるためには何が必要なのか。AERA 2021年1月18日号では、教育情報化が専門の豊福晋平さんに話を聞いた。

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 GIGAスクール構想は、世界の潮流に取り残され、先進国で最低レベルとなってしまった日本のICT教育を立て直す最大かつ最後のチャンスです。しかし、先生たちの負担を一気に増やすような進め方をすると失敗します。ICTに不慣れな先生にいきなりすごい授業を期待するのは、泳げない子どもをプールに放り込んで「さあ50メートル泳げ」と言うようなもの。バタ足、けのびができるようになってから、泳ぐ距離を伸ばしていくように、スモールステップで進むことが重要です。

 成功のためのキーワードは「日常化」と「文具化」。日本の子どもはスマホは使いこなしていますが、PCの使用率は国際比較でも極めて低い。PCがある家庭とない家庭とでは、子どものスキルに大きな差があります。キーボードすら満足に打てない子がいるとそのフォローだけで授業が終わるので、先生たちもPCの使用を躊躇する。それが日本でICT教育が普及しない要因の一つでした。

 PCに慣れるには、デジタル連絡帳から始めるのがオススメです。お知らせや書類の提出を全てオンライン化するのです。授業での使い方も従来は、先生が逐一やることや手順を指示することが多かった。つまりPCは教えるための道具=教具でした。でもこれからは子どもたちが主体的に使いこなす「文具」にすることが重要です。

 先生は最終的なアウトプットと、やり方を大雑把に示すにとどめ、段取りは子どもたち自身に委ねるのです。最初は先生も子どももドキドキですが、失敗しながら慣れていけばいい。焦らず、でも放り出してはなりません。GIGAスクールが成功しなければ、日本の子どもたちに未来はないことを学校も保護者も忘れないでください。(構成/編集部・石臥薫子)

AERA 2021年1月18日号