医学の謎たる「ベートーヴェン」の死 ワインと女性とコーヒーを愛した大作曲家の壮絶な運命 (1/5) 〈AERA〉|AERA dot. (アエラドット)

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医学の謎たる「ベートーヴェン」の死 ワインと女性とコーヒーを愛した大作曲家の壮絶な運命

連載「歴史上の人物を診る」

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早川智AERA#AERAオンライン限定
ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(gettyimages)

ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(gettyimages)

『戦国武将を診る』などの著書をもつ産婦人科医で日本大学医学部病態病理学系微生物学分野教授の早川智医師は、歴史上の偉人たちがどのような病気を抱え、それによってどのように歴史が形づくられたかについて、独自の視点で分析する。今回は、ベートーヴェンについて「診断」する。

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 自宅の近くに美味しい「丸山珈琲」というお店がある。本店は軽井沢だが東京にも支店があって、世界中から上質の豆を仕入れて供してくれる。今月の目玉はベートーヴェン生誕250周年記念コーヒー。丸山珈琲熟練のブレンダーが水野蒼生さんという指揮者の協力で創作した、かの大作曲家をイメージしたレシピに、ラテアートで250th Anniversaryと肖像が重ねてある。口にすると最初はやや苦みが強いが、やがて旨味と甘みが広がるところなど「苦悩を通じて歓喜に至る」イメージそのものである。

■クラシックの代名詞

 必ずしも古典音楽が好きではない人にとってもベートーヴェンの名はクラッシック最大の巨匠として知られている。天性の才能に加えて難聴、貴族社会からの身分差別と失恋、経済的苦境、問題ある家族などの逆境と闘い辛苦勉励して傑作を世に送ったという生き方が明治から戦前戦後(高度成長期まで)の日本人の価値観に合致したためか、年配の方に熱烈なファンが多い。

 一方、若いクラッシック好きの間では一番好きな作曲家にベートーヴェンをあげると初心者かナイーブな人と思われるので少なくとも表立ってはファンとは言い難い雰囲気がある。筆者もここ十年ほど、コンサートでもCDでもベートーヴェンを真面目に聞く機会はほとんどなかったが、このコーヒーを飲んだ後、改めて聴きなおしてみるとやはり大作曲家であるという思いを深くした。

■大作曲家の生涯

 ルードヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven)は1770年12月、かつて西ドイツの首都であったボンに宮廷歌手ヨハン(Johan)と母マリア・マグダレーナ(Malia Magdaleina)の長男として生まれた。父方の祖父は優れた音楽家でマインツ大司教の宮廷楽長を勤めたが、父は才能が無く、ベートーヴェンが生まれた頃には酒浸りの毎日だった。


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