コロナ重症患者の治療にあたる東京医科歯科大学病院のスタッフ。収まらない第3波に医療現場は崩壊の危機にさらされている(画像を一部加工しています)(写真:東京医科歯科大学病院提供)
コロナ重症患者の治療にあたる東京医科歯科大学病院のスタッフ。収まらない第3波に医療現場は崩壊の危機にさらされている(画像を一部加工しています)(写真:東京医科歯科大学病院提供)
AERA 2020年12月14日号より
AERA 2020年12月14日号より

 新型コロナの第3波が到来。全国で感染者が急速に増えている。受け入れ数の増加で医療崩壊の危機が迫っている。AERA 2020年12月14日号から。

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「様々な不条理や疑問を感じるところもございましたので、その概略についてここに明らかにしておきたいと思います」

 北海道旭川市で大規模なクラスターが起きた「吉田病院」の吉田良子理事長が12月1日、病院のホームページでその経緯を突如、公表した。

 旭川市では新型コロナの感染者は市内五つの基幹病院に入院させることになっていて、同病院はその中には入っていない。

 吉田理事長の主張には、旭川市保健所や旭川市、地域医療の中核となる旭川医大病院への厳しい批判も含まれ、関係者を驚かせた。

■体制整備上回るペース

 旭川市は人口約33万人を抱える道内第2の都市だが、10月末までの感染者は50人に満たなかった。歓楽街・ススキノがある札幌市で感染爆発が起きていたのも、対岸の火事だったかもしれない。

 ところが、11月に入って吉田病院でクラスターが発生すると、状況は一変した。「五つの基幹病院」の一つだった旭川厚生病院でもクラスターが起きた。

 地域医療が危機を迎えるのは、突然だった。基幹病院の一つ、市立旭川病院で感染者を診る柿木康孝副院長はこう話す。

「感染者は五つの市内基幹病院で受け入れる体制にしていましたが、体制を整えるよりもクラスターの発生の方がスピードが速く、一気にキャパシティーを超える勢いでした。このため当初は吉田病院から患者さんを受け入れていましたが、感染の速度が勝って吉田病院にも患者がたまっていきました」

 その市立旭川病院でも、コロナの感染者用に確保していた最大11床のベッドを、一般病棟(小児科、泌尿器科などの混合病棟)を空けて35床にまで増やした。さらに入院患者を通常の70%程度に制限し、外来診療も緊急でなければ受診を控えるよう呼びかけている。

「これは、どの町にも起こり得ることだと考えておくべきです」(柿木副院長)

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